【校長としての心構え(9)】「見える化」する大切さ その1

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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校長の権限を明確化

見える化する意味

学校経営に携わる以前から、自分のいろいろな考えを図解化したり、表やグラフにしたりすることには興味があった。

言葉で表すだけではなかなか見えてこないものが、図解化したり表やグラフにしたりすると見えてくることがあるからである。授業でも分かりやすい方法の一つとして、表・グラフ・図を多用した。

校長が表・グラフ・図を使うのには、単に自分の言いたいことを分かりやすくする以外にも意味がある。

その一つが校長の権限を明確にできるということである。校長にしか作れない書類の表化を通して、校長権限の明確化について考えてみたい。

校長にしか作れない書類1―学校経営計画の表化

校長にしか作れない書類の代表は「学校経営計画」であろう。学校の目指す方向性を踏まえた単年度の経営の在り方を示すものであり、一番校長の権限が明確に表れるものといえよう。

1年目は他の学校と同様に「学習指導」「進路指導」「生活指導」などの項目ごとに箇条書きしていた学校経営計画を、2年目から「学校全員」「各教科」「教務部」「進路部」などの校務分掌の分類別に表化した。

実物については、西高校のホームページに掲載されているので、確認していただけると幸いである。

今までA4判2ページで書き表されていた学校経営計画が、総量は変わらないものの個人が読むべき分量はA4判1ページとなった。

教務部の担当者は「生徒部」「進路部」など他の部の担当者を対象とした経営計画を読む必要がないからである。

これで、経営計画の各項目を誰に実行してもらうかを明確にした。それぞれが「知らなかった」とは言えないようにしたかったからである。

校長にしか作れない書類2―校内人事の一覧化

校内人事も、校長の権限を明確に表す一つである。かつて都立高校では必ずしもそれが確立していなかった。

私も30年以上前、一般の教諭の時代に校内の選挙で人事委員の1人に選ばれ、次年度の校内人事を調整する仕事をしたが、大変苦労したのを覚えている。

大変な仕事は教員たちがやりたがらず、結局人事委員が引き受けざるを得ないこともあった。この苦労を通して、人事権の確立が組織にとってどれだけ大切かを実感した。

そこで、校長となったとき、校内人事の内容、具体的には、学年主任、学年担任、教科主任、教科担当、分掌主任と各分掌の担当者一覧、各種委員会の委員長と委員全員、部活顧問など校内人事に関わる全てをA4判にまとめて1枚で表した。

西高校の場合、教職員は約60人であったが、この校内人事一覧に記される人数は延べ400人を超える。

一度に全員を決められないので、職員会議ごとに2月初めの新一年の担任団の発表から、委員会委員の発表、部顧問の発表など一覧表のバージョンを高めていった。

最終的には都教委の管理職異動の発表を受けて来年度の校内人事が確定する。

途中、「転入者①」とか「新規採用者②」とか名前が不明のままで一覧表に記入したこともある。

一応、全教員から希望は取るが、決定は全て校長が行い、原則として事前の本人への告知もせず、職員会議で一斉に発表した。

この一覧は、A4判1枚とコンパクトなため、多くの教員は1年間机の上に置き、いつでも見えるにようにしてくれていた。

まさに「見える化」とともに、ジョブアサインメント(仕事の割り振り)の役割を果たしている。

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