働き方改革を巡る視座『教育学者としての問い』(10)聖域なき議論に期待

学校の働き方を考える教育学者の会

「学校の働き方を考える教育学者の会」は、私が進めてきた「給特法改正を求める署名」提出の1週間前に結成された。会結成のきっかけになったという経緯もあって、連載の終わりに特別に寄稿させてもらうことになった。現場の一教員として、会への感謝と、今後の期待を述べたい。

給特法改正を求める署名は、提出時には3万2550筆(提出時)集まった。賛同してもらえたのはよかったが、提出方法を考える段で私はほとほと困っていた。文科省や中教審とのつながりもなく、郵送くらいしか思いつかない。

そんな折、署名活動を支援してくれた広田照幸氏と内田良氏から、市川昭午氏、藤田英典氏、佐藤学氏に声を掛けてみたらどうかとの提案を受けた。いずれも教育界の高名な研究者であり断られるかとも思ったが、手紙を送ったところ、二つ返事で協力を引き受けてもらえた。恐らく以前から思うところがあったのだろう。その後、中教審のまとめに対し教育学者有志として危惧を表明する「教育学者の会」結成にも至った。

かくして2018年12月4日、給特法改正を求める署名の提出と、教育学者の会として意見表明する共同記者会見が、中教審答申案発表2日前という劇的なタイミングで実現した。会見の様子は会ホームページで公開されている。この動きは、個々の教育学者が学校現場の切実な声を拾い上げてくれたことから始まったものである点を強調しておきたい。現場で苦しむ教員の一人として心から感謝を述べたい。

多くの報道にある通り、今回の学校の働き方改革の答申は必ずしも現場の思いに寄り添ったものとは言えない。だが、あえて中教審の立場で考えれば、学習指導要領をはじめ、従来の体制を前提に議論せざるを得なかったのだろう。対して教育学者の会はより自由な立場で、これまでの「当たり前」を問い直す議論を展開してほしい。

「定額働かせ放題」と話題になった給特法はもちろん、労働の観点による部活動顧問の見直し、授業の持ちコマ数の上限や休憩時間の確実な設定、労働基準監督署のような権限を有した第三者的機関の創設などについて議論が必要だ。講師の同一労働同一賃金、教職員定数問題も改めて言及してほしい。17年末の中教審中間まとめで早々に前提とされた、日本型学校教育の是非についても問い直されていい。

目に映る諸問題を解決するために本当は何が必要か、聖域なき議論に期待している。

(斉藤ひでみ)

(おわり)


【プロフィール】

さいとう・ひでみ 公立高校教員。2017年9月に「現職審議会」を設立。2度の会見を開き、現場からの働き方改革提言を行った。18年2月に給特法改正を求める署名活動を開始、同年12月に国に提出。著書に『教師のブラック残業 「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!』(共著、学陽書房)。