セルフマネジメントの時代~生徒のライフデザイン力を育む(2)「自分自身を知る」ことから

プロジェクトイニシアティブ代表取締役 藤田 勝利

私は2002年から2年間、米クレアモント大学院大学のドラッカー・スクールと呼ばれる小さな経営大学院で学んだ。スクールの創始者であるピーター・ドラッカーが、初めて学生たちに話してくれた内容は今も忘れられない。

当時すでに93歳と高齢だったが、リーダーとして活躍することを目指す学生に、第一声で「Remember who you are. Take your responsibility.(自分が一体何者か、常に思い起こしてほしい。そして、その答えに自分自身で責任を持つことだ)」と語り掛けたのだ。

当時の私はこの言葉の意味を理解できなかった。リーダーシップや組織マネジメントの大家として知られるドラッカーだから、「経営、企業、社会、経済」といったテーマから話し始めると思っていたのだ。だが、彼の最初のメッセージは「自分自身を知れ」だった。

スクールを卒業して実際に事業や組織のリーダーとして働くようになると、この言葉の意図がよく分かる。リーダーとして意思決定したり、行動を起こしたりするときに「他者からどう思われるか」「正解は何か」といった問いは役に立たないどころか、自分の軸をぐらつかせる。難しい決断だからこそ、まず「自分自身」を知らなければいけない。

「自分はなぜそれをやりたいのか、なぜやる必要があるのか」

「自分自身とはどういう人間であるのか、どうありたいのか」

「自分の独自性とは何か、自分の個性や長所は何か」

このような自問とその答えの責任者は上司でも親でも教師でもなく、自分自身であると認識する。これこそがリーダーになるために最も必要なことだと、ドラッカーは教えてくれた。

社会に出て仕事に慣れてくると、自分自身に問い掛ける時間は少なくなる。周囲の期待、与えられた立場、身に付いた常識などが邪魔をして、自分の思いや意図にふたをしがちだ。それが、多くの組織で「リーダーが育たない」と言われる現象の背景にある。

学生時代から、どんな小さなことでも「自分自身の頭で考え、自らが責任を持って決める」場を増やすことが大切だ。決めるときには必ず「自分はなぜそう考えるのか」も考える。

そんな習慣を重ね、徐々に困難な意思決定ができるようになることで、リーダーシップが磨かれる。この訓練を始める時期は早ければ早いほど良い。