教師集団の学びとリフレクション(1)目の前の具体的事実から学ぶ

東京学芸大学教職大学院准教授 渡辺 貴裕

いま「リフレクション」という言葉が、教育の世界で注目を集めています。出版物は今年発刊されたものだけでも、『リフレクション入門』(REFLECT編、学文社)や『リフレクション大全(授業づくりネットワークNo.31)』(ネットワーク編集委員会編、学事出版)、『リフレクティブ・プラクティス入門』(玉井健ほか著、ひつじ書房)がありますし、私自身も『小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ 授業づくりの考え方』(くろしお出版)を出版しました。

リフレクションは、reflect(振り返る、熟考する)という動詞の名詞形で、「省察」などと訳されます。論者によって捉え方はさまざまですが、おおよそ共通しているのは、起きていること・起きたことから学ぶことを大事にするという発想です。

皆さんの周りに、授業を改善しようと熱心にノウハウ本を読みあさるけれども、いろいろな手法をとっかえひっかえするばかりで、授業が変わっているようには見えないという人はいませんか。

あるいは、授業後の検討会で、みんなで同じ授業を見ていたのにそこにはろくに触れず、指導計画やら部会の提案やらを巡るやりとりに終始する、といった経験はありませんか。

いずれも、もったいないなあと私は感じます。自分の実践であれ、他人の実践であれ、せっかく目の前に学びを引き出せるような具体的事実があるにもかかわらず、みすみす逃してしまっているからです。

教師は、授業や学級経営、生活指導など、実務の経験を通して成長します。外科医が執刀を重ねることで、あるいはパイロットが飛行時間を伸ばすことで成長するのと同様です。

けれども(これもまた他の専門職と同じですが)一見同じように経験を積んでいるようでも、めきめき成長する人もいれば、そうでない人もいます。その違いを生み出しているのがリフレクション―経験を振り返り、意味付け、そこから学びを引き出す働き―です。

目の前にある具体的事実を生かして、より効果的なリフレクションを行っていくにはどうすればよいのでしょうか。それは現状の授業検討会の在り方にどんな見直しを迫ることになるのでしょうか。そもそもリフレクションにおいて重要なことは何なのでしょうか。本連載ではこうした問題を扱っていきます。


【プロフィール】

 わたなべ・たかひろ 東京学芸大学教職大学院准教授。専門は教育方法学、教師教育学。「学びの空間研究会」を主宰し、身体と想像力を生かした授業の可能性を実践的に追究。演劇教育・ドラマ教育関連の業績に関して、日本演劇教育連盟より演劇教育賞、全国大学国語教育学会より優秀論文賞、日本教育方法学会より研究奨励賞を受賞。