【校長としての心構え(13)】夢を持つ大切さ その1

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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望めば実現する可能性も皆無ではない

理想の管理職像は

「夢を持つ大切さ」とはいかにも学校向きのタイトルで恐縮だが、学校に限らず組織を経営する場合には、夢や理想を持ち、それを機会あるごとにメンバーに示すのはとても大切だと思う。

私の理想とする校長像は、日ごろはあまり指示を出さずに、教員たちの活動を寡黙に見守っているタイプ。時々夢のような話をする。

当初、教員は「校長は何を夢のような話をしているのだ」と相手にしない。1、2カ月後、生徒の状況を見ていると、微妙に変化する生徒への対応策として、校長の言っていたことはとても大事な提案なのではないか、と分かってくる。やがてそれは、会議のテーマとなり真剣に検討される。

こんな「夢を語れる校長」が理想であった。もちろん、こんな校長になれるわけもなく、会議では「〇〇をやってくれ」「〇〇をしなければならない」と口うるさく指示や依頼をした。

しかし、幾たびかは夢みたいな話をした。それが実現したことも皆無ではない。いくつかの例を紹介しつつ、夢を持つ大切さについて具体的に考えてみたい。

「ただで生徒を海外に派遣できないか」

このシリーズで、西高の文武二道の「文」は「勉強・教養」、「武」は「特別活動」であると紹介した。当時の特別活動は運動部中心の狭い活動領域であり、生徒が自分の興味や関心に十分適合した活動ができているのか疑問であったという話をした。

そのとき、夢を語るつもりで、「ただで生徒を海外に派遣できないか」という話をした。高校生のうちに、日本ではできない経験をさせ、視野を広げ、その中で自分の将来を考えさせたいと思ったからである。当時の若者たちの内向き志向をどうにかしたいというのも理由の一つである。

「海外修学旅行を検討しましょうか」と言ってくれる教員もいたが、海外修学旅行は、ただではないし、全員が参加する形式だと、どうしても集団的、表面的な行動になってしまう。あまり検討に値しないなと思っていた。

当初は全く無理な夢物語だと思っていたが、在職中、意外な二つの方法で実現した。

国際コンテストへの参加

一つは、各種国際コンテストへの参加だ。国内で好成績を収めれば海外で行われるコンテストへの参加が可能となるものである。

具体的には、国際科学オリンピックが分かりやすい。これには「数学」「生物」「化学」「地理」「地学」「情報」の6分野がある。このうち地理と化学の分野で優秀な成績を収め、1人はメキシコ大会に、1人は米国大会に参加した。

生徒のコンテストの成績が向上していった理由はいくつか考えられる。文化部系の部活動も今まで以上に活性化させようとする学校の方針、それに呼応して頑張ってくれた顧問の努力などが大きい。成果を校内に掲示したり、ホームページに掲載したり、校内表彰に時間をかけたのも影響しているだろう。
しかし、何より身近な友人が海外のコンテストに参加できたという事実が、在校生にとって大きな刺激になったと思われる。

以降、生物オリンピックでスイス大会やイラン大会に、言語学オリンピックで英国大会に、バトントワリングでスウェーデンやクロアチアに、それぞれ出場する生徒が出てきた。変わったところでは、スイーツ甲子園に出場した生徒がいた。お菓子作りのコンテストである。関東地区の予選を勝ち抜き、パリ行きを懸けた全国大会の7組にまで残った。

ただ、これらの国際的なコンテストは人数も限られており、望めば行けるものではない。

もっと学校として能動的に生徒を海外に派遣できるシステムはないか検討していたところ、意外なところからオファーが来た。

(次回に続く)

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