セルフマネジメントの時代~生徒のライフデザイン力を育む(10)真摯(しんし)さあればこそ

プロジェクトイニシアティブ代表取締役 藤田 勝利

ここまで、「セルフマネジメント」「リーダーシップ」「組織マネジメント」「起業家精神」「イノベーション」など、青少年が自分の人生をデザインするために欠かせない考え方について書いてきた。

人の持つ「知識資本」が経済を動かす時代、主体となるのは大組織や国家ではなく「個々人」だ。だからこそ、自分自身という資源をマネジメントするとともに、多様なメンバーが集まるチームやプロジェクトを共通の目標に向けてマネジメントする力も必要になる。

多くのチャンスがあふれる時代だ。通信技術や人工知能が進化し、起業や金融の分野で若くして大きなビジネスとお金を動かす人は増えるだろう。

さまざまなツールを駆使すれば、驚くほど省力化され、効率的に事業を遂行することだって可能になる。ゲームやエンターテインメントなど若者の趣味の延長線上にある有望なビジネスも、今後はさらに増えるはずだ。

高速、かつ効率的にビジネスを生み出せるこのような時代に、忘れてはならない原則は何だろうか。私は、ピーター・ドラッカーの言葉をいつも思い出すようにしている。

「マネジメントには、根本的な一つの資質が必要である。真摯さである。(中略)うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人付き合いもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。(中略)何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない」(『マネジメント』ダイヤモンド社)

「真摯さ」の原語は「Integrity」だ。文字通り、高潔な人格と、社会人や事業家としての信念や行動がぶれずに一貫している人物に使われる、敬意が込もった表現だ。派手な言動はなくとも、人として正しいと思うことを高い倫理観と責任感で誠実に実行する人間性を指す。ドラッカーは、どれほど頭が良く、効率的な金もうけの方法を知っている人間だとしても、この真摯さを欠けば「破壊的だ」と言う。

何もかもが便利で省力化できて、効率的にお金を手に入れることも可能な現代だからこそ、この「真摯さ」の意味に立ち返らなければならない。

未来のリーダーである青少年たちにその大切さを教えられるのは、われわれ大人の言葉と姿勢のみである。

(おわり)