クオリティ・スクールを目指す(153)バウチャー助成への期待

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

学習機会の格差是正へ

小学校高学年になると増加するのが学習塾通いである。ただ、低所得者層の子供は行きたくとも行けない。結果として、学力差が生じ、子供が学習意欲をなくしたり、進路などに影響したりする。

このような学習機会格差をなくすには対策が必要だが、千葉市はひとり親かつ生活保護受給世帯に対し、教育に限定したバウチャー(利用券)を配布することにしたという(日経新聞、5月29日)。8月から実施する「学校外教育バウチャー事業」である。

対象は千葉市に住む小学校5・6年生で月額1万円相当のクーポン券が提供される。定員は各学年45人である。希望者を募集するが、定員を超えた場合は抽選になる。

現金支給であれば、教育以外にも使われそうであるが、クーポン券を渡すことで確実に教育費として使用される期待がある。学習塾や家庭教師のみでなく、水泳やピアノなどの文化・スポーツ活動などでも使用可能である。

こうしたバウチャー事業は、千葉県では南房総市に次いで2例目だという。東日本大震災で被災した子供たちを支援するために公益社団法人がクーポン券を配布した例がある。多くの地域で実施してほしい試みで、その取り組みが注目される。

財政的に難しい面もあって、千葉市の場合は市内の70代の男性が2016年に「ひとり親家庭の支援に使ってほしい」と寄付した4千万円が原資である。原資は4年目にはなくなるが、市長は継続したいという。

このバウチャー制度は米国が発祥であるが、もともとは地域の教育を独占的に行ってきた公立学校に対して、私立学校の学費などを使用目的にしたもので、学校間の競争を促して学校教育の質を向上させることが目的だった。

現在は多くの国などでバウチャー制度を実施しているが、その内容は就学前教育を対象にしたものなど、かなり多様である。

千葉市の場合は、学習機会の格差是正という目的がある。生活困窮世帯の子供たちが同級生と同じような学習機会が与えられるようになることで、千葉市こども家庭支援課は「自己肯定感や生活習慣などの改善が期待でき、将来的な自立につながる」と述べている。

スポーツや文化活動など、自分の「やりたいこと発見」とその後の継続的な努力は、将来的に大きな力になることは間違いないであろう。

少子高齢化社会を迎えているわが国は、子供一人一人が社会的に貴重な存在である。そのため今まで以上に幼児から手厚く養育する環境をどうつくり上げるかが大きな課題である。それは、それぞれの地域が実効性のある施策を実施するしかない。

その一環としてバウチャー制度の在り方が理解され、広がることを期待したい。