【校長としての心構え(15)】夢を持つ大切さ その3

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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授業の成果物をまとめモラールアップ

出版部を持つ高校を模索

前2回にわたり「ただで生徒を海外へ派遣する」という、生徒に関わる夢について話した。今回は、主に教師に関わる夢の話である。それは、高校として出版会や出版部を持てないかというものである。

出版部を持っている大学はいくつかあるが、そのミニ版として、高校にも自校のための出版部門があっても不思議ではないと思ったからである。

かつて毎年「研究紀要」を発行している高校で、紀要の編集委員を務めた経験がある。なかなか大変だった。特に、原稿の執筆依頼と編集作業の時間の確保には苦労した。

確かに、紀要にまとめることは勉強になるし、記録としても貴重である。だが、労力の割に反応は少なく、むなしい感覚があった。

当時と比べて学校は格段に忙しくなっており、西高に紀要の委員会を新たに発足させるだけの余裕はなさそうであった。

校内には自分の研究や授業実践を出版している教師が何人かいる。また、進学重点校として入試問題と年2回の校内実力テストは自校で作成しており、それらの中には改作の上市販されている問題もある。さらに各教師が毎時間配布する授業プリントだけでも相当な量になる。これらの出版需要もあるだろう。
もし、大きな負担をかけずに何らかの形でまとめて外部に出せたら、教師の夢が実現することになるのではないかと考えた。

同窓会へ相談を持ち掛ける

公立学校として学校の内部に、市販を目的とした本の出版組織を持つことは難しい。

そこで同窓会の幹部に、「同窓会として出版部門を持つことはできないか」と相談した。実は卒業生には自らの仕事に関わる本を出版している人がとても多い。その時々に、著書を送ってもらうこともある。図書館には「卒業生コーナー」という卒業生が出版した本を並べるコーナーもある。

当時から同窓会は学校に非常に協力的で、現役生のためにいろいろな支援をしてくれていた。出版部門の創設は、甘えついでのお願いであった。

相談したOBからは、笑いながら「まず無理ですね」と回答があった。「何を出版したいのですか」と聞かれたので、当時の校内の出版需要について説明した。
それなら、と幹部の方が、学校の近くの印刷業者を紹介してくれた。

製本された授業プリント

印刷業者にいろいろ相談に乗ってもらった。ある教科の1年分の授業プリントを見せて、製本化できるかを聞いたところ、簡単にできるといわれた。

「授業用のプリントだと濃淡や用紙のふぞろいがあるので、いったん全てコピーした方がきれいに製本できる」「ハードカバーだと重くなり使いにくいので記録保存用となる。ペーパーバックにすれば、手軽に扱えるし、非常に安価で作成できる」ことなどを教えてもらった。

そこで後日、手元にあった1年分の数学の授業プリントと3年分の進路通信を、2部ずつコピーして、それぞれ2冊ずつ製本を依頼した。使いやすいといわれたペーパーバック仕様にした。費用も非常に安く済んだ。

出来上がった本をそれぞれの教師にも進呈したところ、予想以上に喜んでくれた。「今まで何年もプリントを作り続けてきたが、このように製本してもらったのは初めて」とのことだった。

製本は個人の費用で賄った。年間10本以内であれば、費用的には何とかなるが、コピーするのは大変である。費用はだいぶかさむが、コピーから依頼してしまうという方法もある。その場合、学校に保存するようにすれば、一部は公費からの支出も可能ではないかと思う。

出版・市販という夢はなかなか難しいが、製本レベルであれば手軽にできるし、教師にとってもモラールアップ(労働意欲の向上、士気向上)になる。

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