クオリティ・スクールを目指す(154)地域のお年寄りに絵手紙を

eye-catch_1024-768_takashina-school

教育創造研究センター所長 髙階玲治

中学生が自己成長を目指して

千葉県いすみ市立岬中学校は、たびたび新聞に紹介されている(毎日、読売、千葉日報など)。そのわけは、生徒会が中心になって、年末に地域の一人暮らしのお年寄りに絵手紙を手渡す取り組みを行っているためである。

その取り組みにより、小中高校生が自ら設定した目標に挑戦して、どれだけ成果を上げたかを競う「チャレンジカップ2017」(日本チャレンジ教育協会主催)でみごと最優秀賞に輝いている。

目標は二つあって、①お年寄りが喜んでくれること②自分たちがどれだけ成長できるかを学ぶこと――である。生徒調査では①が100%、②が90%だったという。

最近、千葉教育創造研究会で当時の尾川幸男校長から話を聞いたが、4年前に赴任したころは、非行生徒がいて学校は荒れていたという。警察沙汰になる生徒もいた。

そこで生徒の心をなごませ、全校一つの目標に集中させるために、「学校は地域に支えられている」という教師の言葉をきっかけに、15年秋から美術の時間などを使って絵手紙を一人3枚程度制作した。

民生委員の協力を得て、全員で手分けして岬地域に住む一人暮らしの老人宅を調べ、12月25日前後に200人ほどに絵手紙に折り鶴を添えて直接手渡した。

絵手紙には、電話での詐欺や交通事故を防ぐメッセージなどが添えられていて、地域の防犯にも貢献しており、警察署から感謝状も贈られている。防犯ポスターも絵手紙で作成している。

お年寄りからも「有難うございました。でっかい夢をもって、勉強、運動に頑張ってね」と「絵手紙」が学校に届いている。

こうした影響を受けて生徒の一体的な活動は多様に発展している。例えば、2年生による海水浴場の清掃活動や市民の避難訓練では、近隣の保育所の園児の手を引いて高台まで導いた。さらに太巻きずし作りに挑戦し、感謝の気持ちを込めて、長さ39(サンキュー)メートルで作成した。

尾川校長は4年間在籍して退職したが、学校経営の基本構想を読むと、赴任当時からの生徒の基本的な生活態度や規範意識の醸成が教員たちの努力で大きく改善したという。

何よりも「全ては生徒のために」という価値観の共有が大切だとし、「学校教育目標の達成(学校の課題解決)に向けて、積極的にアイデアを出し、協働して仕事に当たる教師」を目指すと述べている。

その結果が、一人暮らしのお年寄りに贈る絵手紙を全員で行うというアイデアを生み、全校的、一体的な活動が次の斬新な活動となり、さらに個々の自己成長を高める好循環を生み出したと考えられる。生徒と地域の結び付きが大きくなったのは確かである。