教師集団の学びとリフレクション(5)ALACTモデルとは

東京学芸大学教職大学院准教授 渡辺 貴裕

リフレクションというのは、既定のチェックリストに基づいた「できた/できていない」の判定などではなく、見え方の転換をもたらすような、ハッとする気付きを含むものでなければならないというのが前回までの話でした。

それでは、こうしたリフレクションはどのようにして生じるものなのでしょうか。

オランダの教育学者コルトハーヘンは、リフレクションが進むプロセスを、「行為」「行為の振り返り」「本質的な諸相への気づき」「行為の選択肢の拡大」「試み」の五つの局面からなるサイクルとして捉え、各局面の頭文字をとって「ALACTモデル」と名付けました。

特にポイントになるのは、第3局面「本質的な諸相への気づき」の存在です。「何が起こったか」を考えるところ(第2局面)からいきなり「他にどんなやり方があるか」の検討(第4局面)に進むのではなく、「何が本質的な問題なのか」を浮かび上がらせる段階を経る必要があるというのです。

中学校国語科での例を示します。その先生は授業で、商品のPR文を、それを売り込むセールスマンの立場になって書くという活動を課しました。立場を与えることで生徒にとって取り組みやすい課題になると考えていたといいます。

けれども、普段はしっかりとした文章を書く生徒が、この日はやる気のない様子を見せ、数行乱雑に書いたものしか提出しませんでした。その態度にムッとしたものの、先生は直接その生徒に「どうして参加しなかったの?」と尋ねました。

聞いていくと、その生徒いわく、「PR文って誰かに見せるための文章なのに、誰に見せるのかよく分からない。相手がどんな人かによって言葉遣いも長さも変わってくるはずなのに」。これを聞いてその先生はハッとしたといいます。自分の教材の捉え方が安易だったことに、また、生徒の力を低く見えていたことにです。

自分がどう説明したか、生徒がどう取り組んでいたかの振り返りが、第2局面に当たります。この先生は、そこから表面的な改善策に向かうのではなく、問題を掘り下げることに成功しました。

「生徒の怠慢ではなく自分の教材理解が不十分だったのでは」という自覚や、「立場を設定すればそれで作文課題として十分なわけではないようだ」という発見が、第3局面「本質的な諸相への気づき」に当たります。これはまさに、その先生にとって見え方の転換をもたらすものだったといえるでしょう。

もっとも、リフレクションにおいて難しいのが、この第3局面、問題を掘り下げる段階です。そこでは何が手掛かりになるか、次回見ていくことにします。