論理的思考を鍛えるアカデミックライティング(5)論理的にと言われたら

文部科学省 教科書調査官 渡辺 哲司

「論理的」もまた、アカデミックライティングの本質を語る上で欠かせないキーワードです。

「論理的にって、どういうこと?」と生徒に問われて往生した経験のある教師もいるでしょう。そうした場面で辞書的に「論理にかなっているさま」(明鏡国語辞典)などと答えても、生徒の書く手は止まったまま。次の授業までの間にいそいそと論理学の教科書をめくってみても、状況は少しも好転しません。

そのような場合は、抽象的な概念ではなく、具体的な作業や型の方からアプローチを図るのがよい――と私は考えます。

作業として最も素直なのは、自分が読んで「論理的だ」と感じる文章を集め、それらをお手本として(まねて)書くことです。ただし、今まさに書かねばならぬ文章にぴったりのお手本を見つけることは難しい。また、論理的だという「感じ」のポイントをつかめぬうちは、お手本探しの効率もよくないでしょう。

そこで、私がこれまで試みてきたのは、生徒たちに「論じる」という一種の型を示し、それに倣って話したり、書いたりする経験をしてもらうことです。授業中の質疑応答から授業後の感想まで、全てをその型にはめてみると、誰でも取りあえず「論理的っぽく」述べることができます。

そんなものは形ばかりの安直な方法――とのそしりは甘んじて受けますが、それも一つの考え方。私は、世間の「体験××」のように、取りあえず「できた」という感覚を持って、後から徐々に本当の力を身に付けていくのも「あり」だと考えています。

論じるとは、「問い」に「根拠」をもって「答え」ること。それら三つの要素がそろっていて、適切に並び、結び付いていれば、ひとまず論じることはできていると見なします(問いと答えが合体して一つの「主張」を成すこともあります)。

この「論じる」という型が身に付いてくると、論理的だという「感じ」のポイントもつかめてくるでしょうし、「お手本」を探し当てる効率のアップも期待できるでしょう。

なお、実際に作文するときには、それら「論じる」の要素を一つ一つ、文章のパーツとして視覚的に(形で)示すようにしましょう。すなわち「問い」や「答え」の在りかを、改行と字下げで作るパラグラフや、見出し付きの項・節によって明示するのです。

そのようなパーツを基に文章を組み立てていくのも、アカデミックライティングの要諦。次回からは「組み立てる」を説明していきます。