論理的思考を鍛えるアカデミックライティング(6)つづるのではなく「組み立てる」

文部科学省 教科書調査官 渡辺 哲司

「組み立てる」も、アカデミックライティングを語る上では欠かせないキーワードです。その意味を際立たせるために、今回はまず、あえてその対立概念である「つづる」から説明を始めましょう。

「つづる」作文とは、思ったことや起こったことを思った順、起こった順に書き並べていくものです。その基礎は、書き手の連想と時間の流れにあります。典型例は、学校で行事のたびに書かされる感想文です。子供が書き方の指導を受けずに作文すると自然にそうなる――という点では「子供らしい」書き方とも言えます。

そうした「つづる」作文には教育上の大事な役割が一つあり、それは、教師が生徒の心を知る手掛かりになることです。そのためにこそ、一にも二にも「ありのまま」が尊ばれるのでしょう。

ちなみに、昭和の前半ぐらいまで、作文は一般に「綴(つづ)り方」と呼ばれていたそうです。その背景にある「綴り方運動」がどんな状況下で、何を目指して行われたものであるかを知れば、なぜ作文イコール綴り方であったのかも納得できます。

一方「組み立てる」作文は、書き手の心などはさておき、もっぱら読者に対して正確に事実を伝え、明確に意見を述べ、できるならば読者を説得することを目指します。書き手の連想や時間の流れも、あるいは調べて知ったことも、全て「情報」として、読み手の視点から選び抜き、並べ、結び付けて提示します。

そのように文章を組み立てる際、有効な要素技術の一つが、アウトラインの作成です。アウトラインとは、文章の各パーツ(パラグラフ、項、節など)の要点を、簡潔な語句によって、またパーツ間の位置関係(順番や縦・横方向の配置)によって、表す文書のこと。最近の小・中・高の国語教科書には「構成メモ」などの名称で必ず載っています。

アウトラインを作成する利点はいくつかありますが、そのうち私がここで強調したいのは、ピアレビュー(相互批評)に最適である点です。文章よりも簡潔であるために読み手の負担は小さく、それでいて論理の流れはしっかり追うことができます。アウトラインの段階で他者に分かる・伝わるものとなっていれば、その後はほぼ間違いなく、筋の通った文章を比較的楽に仕上げることができます。

そして、良いアウトラインを作るためにどうしても欠かせない基盤技術こそ、次回からのテーマである「パラグラフ・ライティング」です。