論理的思考を鍛えるアカデミックライティング(8)パラグラフ・ライティング(下)

文部科学省 教科書調査官 渡辺 哲司

「パラグラフ・ライティング」は、パラグラフを基本単位として文章を組み立てる技術です。

前回、パラグラフの内部構造には一定のルールがあり、それによってもたらされる利益があるのだと述べました。「ルール」とは、一つのパラグラフには全体を統括・代表して他のパラグラフと論理的につながるセンテンス(中心文)が一つだけあり、それが大抵は先頭に置かれることなどを指します。

パラグラフの内部構造がもたらす利益は、読み手と書き手の双方に及びます。

読み手にとっての利益は、何といっても素早い読解です。各パラグラフ先頭のセンテンスを拾い読めば、文章の大意を把握できます。それが、忙しい人にとってはありがたい。そうした読み方はスキミング(skimming)と呼ばれ、最近は日本の高校の英語教科書でも紹介されています。それだけ一般的な読解技術だと言うわけです。

一方、書き手にとっての利益は三つある――と私は考えます。

一つ目は、骨の折れる推敲(すいこう)作業の助けになること。スキミングの要領で各パラグラフ先頭のセンテンスを機械的に拾い読めば、細部にとらわれることなく、割合と冷静に論理の流れをチェックできます。

二つ目は、文章の要約を作るのが容易であること。こちらもスキミングの応用です。長めのレポートなどを書く際には同時に要約が求められることも多いので、この技が威力を発揮します。

三つ目は、論理的な思考・表現の良いトレーニングになること。ある教師によると、パラグラフ・ライティングを学ぶ人たちの作文過程には、次のような変化が生じます。すなわち、まず①個々のパラグラフの内容と役割が明確になり、次いで②パラグラフ同士の関係が明確になり、そして③文章全体の構成が明確になっていく――と。

そのように変化した作文過程は、面白いことに、日本の国語教育がこれまで広く教えてきた「評論」の読解手順とピタリ符合します。すなわち、まず①個々の段落の内容と役割を捉え、次いで②段落同士の関係を捉え……という手順と重なるのです。もとより論理的な文章の読みと書きとは表裏一体、ということでしょう。

ちなみに、本連載でもパラグラフ・ライティングを実行してきました。ただし、新聞紙面の形状に合わせて、個々のパラグラフは限界まで短く(それより短くしたらパラグラフとは呼べないぐらいに)切り詰めてあります。試しにスキミングをしてみませんか。