教師集団の学びとリフレクション(10)付箋で出し合えばOK !?

東京学芸大学教職大学院准教授 渡辺 貴裕

授業を振り返る話し合いにおいて、各発言に結論めいたことを伴わせず、学習者側(および授業者側)がどう考えたり感じたりしたかをコンパクトに出し合うことで、発言の連鎖が生じ、そこから徐々に、鍵になる問いが浮上してくる。前回は、深いリフレクションを目指した教職大学院での模擬授業と検討会の取り組みを元に、話し合いのこうした進み方について述べました。

この知見は、実際の学校現場での授業検討会にも示唆を与えるものになるでしょう。

例えば、授業検討会で、しばしば、初めに参観者らが付箋に「よかった点」「もっとこうすればよい点」「尋ねたい点」(あるいは、「成果」「課題」「疑問」)を書き出し、それをグループごとに模造紙に貼って交流するところから始めるやり方が行われています。確かに、以前この連載でも触れたような、授業者と参観者との間でのやりとりの往復に終始してしまうような検討会と比べれば、活発な話し合いになりやすく、参加できたという感覚も得やすいものだと言えるでしょう。

けれども、これは、いわば最初から「結論めいたこと」を参加者に書かせるやり方です。そこで出てくるのは、各参加者がすでに持っている枠組みに基づいた評価や改善案になります。それを各自が表明した上で話し合いをスタートするとなると、授業で起きていたことから豊富に材料が出されて問いが浮かび上がり深まっていくような展開は起こりにくくなります。

もちろん、付箋を使うこと自体がまずいわけではありません。付箋を使うにせよ使わないにせよ、最初に行うべきは、授業で何が生じていたか、自分の目に留まったり気になったり面白いなと思ったりしたことを、また、その場に同席していた自分の心の動きを、素朴な形で出し合うことです(「いいこと」を言おうとしない!)。「ここのグループでこんなことが起こっていた」「先生のあの発問に対して○○さんが△△していたのがすごいなと思った」といったようにです。このような形で述べていると、それに触発されて、「こっちのグループでは……」「私は□□が気になって……」と連鎖的に発言が出てきて、状況が立体的に見えるようになっていきます。それが、問題を掘り下げるための入口になるわけです(出てきた材料がどのように問題を掘り下げるための問いにつながるのかについては、拙著『小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ 授業づくりの考え方』を参照してください)。

さて、授業での出来事を出し合うといっても、どのようなスタンスで授業を見て話せばよいのか。次回はこの問題を扱います。