論理的思考を鍛えるアカデミックライティング(9)「論理国語」登場

文部科学省 教科書調査官 渡辺 哲司

論理的な文章の組み立て技術であるパラグラフ・ライティングは、これまで日本の初等中等教育界でほとんど教えられてきませんでしたが、その状況に最近、注目すべき動きがありました。

その動きとは、2022年から高校の国語に新科目「論理国語」が開設されると決まったこと。この科目で何が教えられるかは、併設される科目が「文学国語」「国語表現」「古典探究」であることからいくらか推察できるでしょう。

論理国語に注目すべきであるのは、そこで実質的にパラグラフ・ライティングが教えられるためです。

論理国語の科目内容を定める学習指導要領に「パラグラフ・ライティング」の語はありませんが、代わりに「段落の構造」というフレーズがあります。それについて解説書は「一つの段落には、中心となる一つの文と、その内容を支える(言い換えたり、例を挙げたりする)文のみが含まれ、(中略)各段落の中心文だけをつなげて読めば、文章全体の論旨が理解できる」と説明しています。

この「段落の構造」こそ、パラグラフ・ライティングの実質に他なりません。

論理国語の登場を、私は、過去数十年にわたる国語教育改革(論理的な思考や表現を重視する内容への転換)の歩みの中の「一里塚」と見ます。経緯を探ると、早くも1970年代には表現力重視の方針が打ち出され、80年代末には「自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力」などを育てるように改めると明言。その後の流れは周知の通りです。

論理国語は選択科目ですが、多くの高校生がそれを選んで学ぶと見込まれています。なぜなら、いまや高卒者の半数以上が進学するようになった大学の入試と強く関連する科目だ、と見なされているからです。

その一方、高校の国語教師たちの中には、この新科目に対する抵抗感や戸惑いもあると聞きます。伝統的な国語教育の理念に合わないとかいう説はさておき、教師自身が学んだ経験のないパラグラフ・ライティングなどを教える困難は、はた目にも想像できます。

そこで私が提案するのは「論理国語」的なことを教え慣れている大学教師が、戸惑う高校教師を助けること。とりあえず、広報活動で高校を訪れるついでに、パラグラフ・ライティングの指導などについて、お茶飲み話をしてみてはどうでしょう。そういった教師同士の交流こそ、いわゆる高大接続の決め手でもありますし。