教師集団の学びとリフレクション(13)学習活動の追体験

東京学芸大学教職大学院准教授 渡辺 貴裕

前回、教師が学び手としての感覚(学び手感覚)を活性化して子供の学習を内側から捉えることの重要性、また、そのため、子供が行う学習活動の体験を組み入れた事前検討会について述べました。

同じ発想を、事後検討会においても役立てることができます。事後検討会は、通常、授業者の振り返りや参観者らの感想の交流から始まります。その前に(あるいは途中に)、その授業で子供が行っていた学習活動の追体験を、教師たちで行ってみるのです。

例えば、ある小学校でこのやり方を用いて、国語の物語文の読みの授業の事後検討会を行ったときのこと。この授業では、子供がペアで、ある場面での2人の登場人物のやりとりを演じ、さらに、一方の登場人物の「心の声」を想像してその中でつぶやくという活動を行っていました。事後検討会では、この活動を教師もペアになって行ってみました。

授業で子供たちがこれを行ったとき、「心の声」を言いにくそうにしている、あるいは、考えておいたことを言うだけでその状況の中でのつぶやきにならない、といった姿が見受けられました。その時点では、見学の教師らは、「どうすれば子供が言いやすくできるだろう」と考えていたようです。けれども、事後検討会で教師らもペアでこの活動を行ってみたところ、見え方が違ってきました。「確かにこれは言葉にできない」というのです。この場面は、2人の登場人物のぶっきらぼうとも不器用ともとれるやりとりの奥に、温かな交流やほのかに惹(ひ)かれ合う様子が感じられるシーン。そこではっきりと言葉にさせること自体に無理があるのではないかと、自身の体験と子供の姿から、考えるに至ったのです。

事後検討会では、この後さらに、「心の声」を言わないバージョンも試してみて、感じ方や頭の働き方の違いを経験し、それらを踏まえて、さらに授業の振り返りを進めていくことになりました。このように、子供が行っていた学習活動やそのアレンジ版を体験して教師の学び手感覚を活性化することは、授業のリフレクションを促進します。

こうした追体験は、活動が伴うもの、プログラミング学習など多くの教師らにとって新奇なものの場合、特に行いやすいでしょう。とはいえ、例えば高校の数学の授業の振り返りでも、「試しにこの問題をみんなで解いてみましょう」と取り組んだ中で出てきた、数学科ではない教師のふとしたつぶやきが、授業中の生徒の振る舞いの意味を捉えてリフレクションを深める手掛かりとなるなど、追体験の応用範囲は広いと考えられます。