【校長としての心構え(18)】部活動を管理する重要性 その3

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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関係者の多様な思い

部活動に関しては、保護者、OB・OGなどの関係者もさまざまな意見を持っている。校長に直接訴えてくるような例は少ないが、それでも「練習が厳しい」「試合に勝つためにはもっと練習時間を増やす必要がある」、時には「顧問を替えてほしい」という意見もあった。こうした意見・要望に対しては、個別、もしくは部活保護者会を開いて顧問にも同席してもらい、校長の考え方を説明した。

まず、部活動は学習指導要領上に全く規定がないこと、つまり「教員の本務ではない」ことを話した。すると、ほとんどの保護者がその事実を知らなかった。「部活動は学校の責任の下、できて当たり前」という感覚だったのだろう。

教員が異動する際、部活動の指導はほぼ考慮されないので、顧問の異動で指導者不在となる可能性がどの部活動にもある。

また、指導できる教員が続いたとしても、指導方法が大きく変わるかもしれない。顧問を務める教員に対しては「著しい不合理がなければ、顧問の判断を基本的に承認する」のが校長としての判断基準であり、これは授業など、教員の本務とは異なる基準であることも説明した。

保護者の多くは本務でないことを理解してくれたが、部活動の教育的意義を説く人もまた多かった。「部活動は子供たちにとって意義深い活動だ」という主張である。私も同様に、部活動の教育的意義はとても大きいと思っていた。ただ、保護者、OB・OGの考える意義とは、少し差があるように感じた。

私が考える部活動の意義は、高度な知識や技術を習得することでもなければ、勝利を重ねてその道の専門家になることでもない。同じ部の部員であっても、よく見れば意欲や技術、熱意には差がある。そんな違いのある者たちが大きな目標に向かって、みんなで力を合わせ、励まし合っていくことが大切なのだと考えた。できる者は時に我慢もしながら部全体のレベル向上に励み、できない者は早く追い付くために人一倍努力して、切磋琢磨(せっさたくま)し合っていく。

そこに意義があると考える以上、自分の子供の力に一番合った練習をさせたいという保護者の気持ちは分かるが、要望に沿うことはできない。勝利にこだわるOB・OGの主張に対しても、学校が目指す部活動の意義からは外れると説明した。

改めて部活動の在り方を考える

夏季休業中の早朝、部活動の合宿に出発する生徒たちのバスを校門脇で何度も見送った。生徒の表情を見ると、特に一年生は緊張気味である。

ところがひとたび合宿が終わると、彼らは自信にあふれた様子で学校に帰ってくる。集団活動の機会が減少しつつある今日、このような情景を見るたび、部活動の意義は大きいと思わざるを得ない。だが、部活動が教員のやらなければならない仕事かと問われれば、私は否定したい。

教員が部活動の顧問として出勤や引率出張する場合は届けが必要なので、年間を通して、土日の出勤日数も全て管理していた。

西高の場合、ほとんどの教員が年間100時間を超えており、一部には300時間超の者もいた。部活動と勉強を両立させる「文武二道」を掲げ、土曜日と日曜日のどちらかは必ず休む、夏休みも合宿を含めて練習は20日以内――と決まっていたにもかかわらず、である。

昨年、一連の「学校の働き方改革」の中で部活動のガイドラインも制定された。有意義な教育活動である一方、不安定な位置付けだった部活動がようやく見直されるようになってきたのは、喜ばしいことである。

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