【令和時代の扉を拓く(7)】コミュニティシップの大切さ

教育創造研究センター所長 髙階 玲治

東京都の近郊のA小学校の全国学力・学習状況調査で意外な結果を見いだした。「今住んでいる地域の行事に参加していますか」の問いに、「当てはまる」と答えた児童が6.9%だった。全国平均は37.0%で、10年前と比べるとやや高くなっている。

なぜ、この学校は極端に低いのか。実はこの学校は地域で伝統校と言われていて、60歳代の卒業生に話を聞くと、強い愛校心を今も抱いている。子供の頃、地域は神社を中心としたまとまりがあったという。地域にはさまざまな行事や遊び場があって、当時からの仲間意識が続いている。

しかし、10数年前からマンションが急激に増加して、地域は大きく変化し始めた。人口も急増した。住民の多くは東京都に勤務する働き手である。両親共に働く家族も多くなった。東京都に近いという便利さがこの地域を支配している。

以前からこの地に伝わる言葉を教えられた。「東京は生きどころ、○○は死にどころ」というのである。勤務地が東京であることは当然で、寝起きする生活の場がこの地域であるにすぎない。その意味で便利な地域である。

そうであれば、以前と変わらない地域風景のように思えるが、いま60歳代の小学生時代と全く異なるのは、車社会という交通の利便性と各地に多様に点在する遊園地やテーマパーク、総合公園などの多さである。休日になれば、気軽に出掛ける場が多くなった。結果として、子供の心は地域行事から離れることになる。自分の家の周囲よりも楽しい場所がたくさんある、と。

この傾向は、今後強まることは確かである。地域意識の希薄化である。さらにデジタル人間の低年齢化ははっきりしていて、電子機器が子供の意識を左右するようになる。

現在、全国的にコミュニティ・スクールの展開が進んでいるが、こうした子供の意識の変化にどう関与できるであろうか。100年以上前「コミュニティ」という言葉のニュアンスは、「特定の地域における特定の人々のグループ。メンバーは互いに知っていて、互いに評価し、見守り合う。習慣と歴史と記憶を共有し、時には一部のメンバーのために全員で行動しようと決意できる」とされてきた。カナダの経営学者ミンツバーグ・マギル大教授は、それを「コミュニティシップ」と呼ぶ。

コミュニティシップが重要なのは、人と人をつなぎ、共同社会を構成できる地域のコミュニケーション化が可能になり、そこに共通の利害とともに、歴史、記憶などの価値観を共有し、そこに住むことの幸せを体得できる可能性が大きいからである。

社会の変動によって当然子供の意識は変わる。それに対してコミュニティシップのよさを体得させる手だてを考えることが、今後ますます重要になると考える。