【クオリティ・スクールを目指す(162)】校長は将来へのアドバイスを

教育創造研究センター所長 髙階玲治
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子供・保護者の悩みへの対応

子供の将来を考えれば、どのような道に進むのか、AI時代を迎えてますます難しくなった。特に、将来的に「残る仕事」「なくなる仕事」が挙げられていて、子供が成長に伴って身に付ける能力の考え方も変わりつつある。

しかし、「子供は未来からの留学生」であるから、将来生きる上での確実な「力」を獲得する必要がある。

それをどう考えるべきか。

東京都千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長の『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SBクリエイティブ、2019)を読んで感じたのは、校長の「非常識な教え」ではない。「心の教育が席を譲らない社会をつくる」「協調性は子どもへのストレス」「一位をほめない、頑張ったねと言わない」といったことが内容にあるが、自分なりの考えに基づく教育観・指導観である。言わば、状況に応じた判断である。

それを読みながら私が特に感じたのは、校長として生徒や保護者からの多様な相談に対してどうアドバイスするか、という姿勢である。

保護者や生徒は、進路を含めて悩みを抱えていることが多く、直接には指導教員への相談が多いであろうが、校長が率先して相談に乗ってくれれば、これ以上心強いことはないであろう。

特に、ごく近い将来、高校・大学の入試が様変わりする。かつてのような受験学力が有効に機能しなくなる。代わって、AI時代に必要とされる人間的な「力」が求められるようになる。

その結果、将来に向けてどのように生きるか、どのように力を磨くかは高校や大学の教育実態が変わることで新たな展開を迎える。それが差し迫っている。

そうした教育の新たな在り方を生徒や保護者にどう伝え、また直接的に学校はどう対応すべきか。これからは校長の「身の上相談」が求められるであろう。そのために、子供の成長に現実的に対応できる教育観・指導観を磨くことが必要になる。工藤校長の著書は、そうした校長としての教育観や姿勢などを多彩に示した好著である。

実のところ、AI時代に子供に身に付けるべき「力」について新たな認識が必要なのは何よりも教師個々であると言える。そうであれば、校長の示すこれから重視される教育観や指導観を校内で共通した認識にまで高める必要がある。

校内の共通認識が高まれば、そこに新たな教育観・指導観が醸成されて、学校の雰囲気が変わる。将来に向けた「身の上相談」的な対応が校内に充実することで、子供や保護者への確かな信頼もまた生まれる。その中核に校長の確かな存在がある。

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