【校長としての心構え(23)】ほめることの大切さ②

元東京都立西高等学校長 石井 杉生

「承認の欲求」の強さ

前回、褒めることによって生徒が驚くほど伸びたという話をしたが、教員はどうなのだろう。

近年の教育改革の中で、生徒や校長による評価からの圧迫感、事務処理業務の増大などによる多忙感が増し、やや自信喪失気味の教員が多いように思えた。

アブラハム・マズローの欲求階層説によると、最上位の欲求は「自己実現の欲求」であるが、満足感・充足感という点では、その一つ下の階層に当たる「承認の欲求」が満たされることが大事である。流行語になるほど「インスタ映え」という言葉が広まったのにも、「いいね」が欲しいという承認の欲求が見てとれる。かつては「力ある者は叱って伸ばす」と言われたが、今は「褒めて伸ばす」が人材育成の基本である。

幸い、教員を褒める要素はたくさんあった。まず授業がうまい教員が非常に多い。授業観察でも感心することがしばしばある。生徒たちの授業への満足度も高い。また部活動をはじめ、特別活動面での指導も素晴らしかった。前面に出て活躍するのはあくまで生徒で、本当に困ったとき以外は静かに見守っている。この見守る距離感が難しいのだが、実に生徒にうまく合わせている。

職員会議を褒める場に

では、どこで教員を褒めればよいか。思い付いたのが職員会議である。

かつて職員会議は、学校の意思を決定する重要な機関であった。それが都立高校改革の中で、校長の権限を阻害・制約する「議決機関」から、決定事項を周知する「伝達・周知を図る場」へと変わり、軽い役回りになった。

学校の方針を決定するのは各分掌の主任らによる企画調整会議であるが、その結果は資料を含めいつでも閲覧可能で、職員会議を待たずとも決定事項を知ることができる。水曜日は授業が7時間目まであるため、職員会議に割ける時間は4時半から5時までの30分間しかない。教職員全員が一堂に会する貴重な機会でありながら、あまり重要なことが行われていない。

この職員会議で教員を褒めれば、重みを失った職員会議に新たな価値を付与することになり、教員らにも喜んで参加してもらえるだろう。そう考えて実践した結果、会議の雰囲気は今まで以上に良好になり、5年間、私自身も職員会議に出るのが楽しみだった。

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