【校長としての心構え(29)】人材育成の大切さ①

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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教員はいつ成長するか

民間企業を対象とした経営書を読むと、よく「人材育成は管理職の一番大切な仕事である」と書かれている。学校でも民間企業と同様に、人材育成は大切である。しかし、管理職に育ててもらった記憶はあまりない。

若い頃に在籍していた学校には多くの尊敬できる先輩がいて、いろいろ相談に乗ってもらったり、指導をまねしたりもした。しかし、まだ人事考課制度が導入されていなかったこの頃、管理職、特に校長と1対1で話をする場面はほとんどなかった。

自分自身が教員をしていて、大きく成長したと思えたのは、初任の1年目と、初めて学級担任として過ごした3年間、次の学校に異動した1年目の3回である。同じように感じている教員は、きっと多いのではないだろうか。

初任の1年目は何もかもが初めてで、毎日が学びの連続であった。初めて担任を持ったときも、間近で生徒の成長を目にして、生徒を固定的に見ては駄目だと学んだ。

学校を異動してみると、今まで「絶対」と思っていたことは単に校内のルールであり、別の学校では全く違うルールが成立するのだと気付いた。

これらは全て、指導者の指導によって学んだのではなく、その環境から自分自身で学びとったものである。

教員は教員の指導が下手?

教員は、他の教員を育成するのがあまりうまくないのではないかと私は思っている。もちろん、1年目で素晴らしく成長する教員もいる。ただそれは、その人の中にある教員としての生得的な資質が花開いたのであって、指導担当者の育成の力量が高かったからではないような気がする。

もし、その指導担当者の力量に負うところが大きいのだとすれば、育成してもらった全ての教員が著しく成長するはずである。生徒の指導において評判のよい教員は大勢知っているが、教員育成に定評があるという教員は残念ながら聞いたことがない。

平成に入って初任者研修が始まり、人材育成の底上げが一定程度できたように感じることは確かにある。それでも、教員の資質・能力が昭和の時代より格段に良くなった気はしない。校長になったときに、教員育成のガイドブックを探したが、納得いくような本は見つからなかった。

では、私は人材育成をどう考え、どのようなことを実践してきたのか。次回以降、その内容を紹介していこう。

(つづく)

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