【クオリティ・スクールを目指す(171)】異常事態の教育課程経営

教育創造研究センター所長 髙階玲治
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子供の実態への取り組みが基本

今年の小学校の新年度入りは異例だった。新教育課程の実施によって教科書が変わり、年間指導計画作成は新たな構想が必要だった。2年間の移行期間に新しい体制づくりを進めていたであろうが、新型コロナウイルスの影響で3月初めから休校となり、4月始業どころか5月初めまで延びた学校も多い。

特に今年は改訂年度であって、教科書は1割程度内容が増えたとされる。「主体的・対話的で深い学び」が示され、子供の学習活動が増加することから学習内容を縮減しない限り授業時数が不足する事態が予測されていた。また、英語科やプログラミング教育の新規導入などもあって指導体制は困難度が増した。

さらに新教育課程は①教科横断②各種データの収集とPDCAの実施③地域の人的・物的資源の活用――が強調されている。

そうした新しい状況への移行時期に起きた休校である。3月の学習内容未履修だけでなく4月も未履修になる学校も多い。5月からの授業内容は未履修内容を含めて新たな組み替えを必要としている。非常事態の出現である。

特にウイルス予防のために従来のような机を寄せた話し合いは慎重にならざるを得なくなって、特に「対話的活動」がやりにくくなるであろう。各学校の独自の工夫や努力が求められている。4月休校の場合はさらに慎重な経営戦略を考える必要がある。

ただ言うまでもなく、学校の教育課程経営の基本は、子供、学校、地域の実態を踏まえることである。特に子供の実態の把握は重要で、教科書カリキュラムの形式的な導入は避けたいことである。

従来は年度当初作成した年間指導計画がモザイクのようになっていて、よほどのことがない限り変えようとしない傾向が見られたが、今年度は柔軟に変えてよい体制をつくる必要がある。

むしろ年度途中でも変えられる、と考えれば当座の指導に無理せず取り組むことができる。非常事態であるからという理由のみでない。教育課程経営の基本を考えれば、教科横断にしろ、地域の教育資源の活用にしろ、単元構成は実施時期に念入りに検討を加えるのでなければうまくいかない。年度途中での適切な教育課程の実施こそ望まれるのである。

その意味では今回は真の教育課程経営を学校が突き付けられた格好である。学校が主体的に自校に即した適切な教育課程を経営することの重要さである。年度途中のPDCAの実施で改善を重ねるべきである。教育課程経営は学校教育の要である。

そのためにも余裕のある取り組みを考えたいが、改めて学校の創意工夫や教職員の協働体制の必要性など、深く実感できる機会になるのではないか。持続する学校教育のためにも、今回の特別な経験をさらにより良い学校改善につなげていきたい、と考える。

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