【校長としての心構え(31)】人材育成の大切さ③

元東京都立西高等学校長 石井 杉生
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過失責任論

「失敗を責めない文化」を創る上で、失敗やミスをどのように管理するかが、管理職としてとても大切なことだと思う。事故が起こったとき、誰がどのようなミスをしたのか追及することは多い。そして、ミスをした人を見つけ出し、その人に責任を負わせることによって、事件が解決したかのように錯覚することがある。

そうして過失者に責任を取らせる考え方を「過失責任論」と言うが、この理論が支配している組織の中から冒険やチャレンジは生まれない。むしろ、「人間はミスをするもの」という前提に立ち、仮にミスをしても大きな事故や事件にならないようにするシステム(これを「フェイルセーフ」という)を作ることが大切である。学校内にこの意識があるかないかの差はとても大きい。

校長時代、マスコミに取り上げられるような事故が校内で起きた。事件後、私は全校生徒の前で「誰がやったのか」という犯人捜しは問題の根本的な解決にならないこと、むしろ大きな事故に至らないシステムを学校として作っていく必要があることなどを話した。

事故発生時に生徒を指導していた教員が校長室に謝罪に来たが、この教員を責める気にはならなかった。校内にフェイルセーフのシステムを作り上げるのは、管理職の責務だと考えたからである。

チャレンジ目標

「失敗を責めないこと」は大切だが、それだけではやはり不十分である。教職員により積極的に挑戦してほしいと考えたので、自己申告書の中に「チャレンジ目標」を設定してよいことにした。

「チャレンジ目標」とは、達成困難な高度な目標のことで、達成できれば高い評価を与えるが、仮に達成できなくともマイナス評価はしないという目標のことである。「ダメモト」と言えば分かりやすい。

自己申告書となると先生方はやはり慎重になってしまうようで、実際に「チャレンジ目標」を設定する人は、残念ながら多くなかった。しかし、教職員一人一人を見ていると、いろいろなことにチャレンジしていく人が少しずつ増えてきたように思えた。そして、この「一人一人を見ていく」ことが、人材育成においてとても大切なことだと気付いた。

(つづく)

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