【クオリティ・スクールを目指す(174)】来年度9月入学は見送りだが

【クオリティ・スクールを目指す(174)】来年度9月入学は見送りだが
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5歳児入学が次の課題

 コロナ禍で休校が続き、正常な履修が難しいことから突然のように9月入学が浮上した。そのため今年度から実施か、と反対論を唱える声もあったが、当然実施不可能なことであった。例えば、新1年生は4月からの学びが始まっている。それに割り込む形で9月からの1年生と同居することになったらどうなるか。このことだけでも今年は不可能だった。ところで、今回の9月入学はどの程度大ごとであろうか。明治の学校開始や戦後の新制中学校を考えてみても、当時の改革はすごかった。何よりもこの2つの改革は教育が国民全体に行きわたる希望や、義務教育の年限が延びて一人一人高度な学びを体得できるという期待があった。今回はどんな期待を描くであろうか。メリットは休学での学習の遅れを取り戻すことであろうか。学力は半年遅れになることでむしろ下がるのである。OECDのPISA調査は年齢に基づくので確実に低下するであろう。ただ、ますます進むグローバル化によって国際的な連鎖は強くなることから、学習機会の同時性が求められるようになる。遠隔教育は国を超えて行われるようになる。9月入学を阻む要因として、来年度一気に実施するとしたら、小学校で入学児童が4割増加し、2.8万人もの教員が不足という。さらに、1歳半も異なる児童が同じ学級を構成することの指導の難しさもある。その状態がこの学年だけ卒業まで続く。また、半年遅れになることで、その学力の低下をそのまま続けてよいか、という課題がある。最近の子供は学習成長がかなり速くなっている。デジタル世代でもある。より高い学力を保障するために、学習指導要領の早急な改訂が必要になるのではないか。そして次の課題は5歳児入学になるであろう。9月入学では、学齢の開始が遅い児童は7歳5カ月目でやっと入学するのである。あまりにも遅すぎないか。ともあれ、来年度の9月入学は見送られることになった。そこで長期休業短縮、7時間授業、土曜日授業、今年度の学習内容の一部を次々年度まで繰り越す、などが一気に学校の課題になる。特に小6・中3の卒業年度の子供の負担が大きい。分散授業などへの学校の指導体制はうまくいくであろうか。いつになれば正常な授業に戻れるか、先の見えない悩みを抱えながら、開校してよかった、と子供たちの笑顔を頼りに日々努力される教員や学校関係者に敬意を表したい。教師力の向上や働き方改革など、抜本的に改善したい教育課題は山積している。

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