【クオリティ・スクールを目指す(181)】SDGsで難民問題に迫る

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
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持続する学びが深化する

『初等教育資料』(東洋館出版社)の最後に「NEWS」というささやかで目立たないページがある。その7月号を読んで目を見張った。

「難民×地球の未来を守り隊」という4年生の実践である。それを1年間指導した神奈川県鎌倉市立小坂小学校の川坂俊一教諭は持続的な指導力がかなり高いのではないか。

実のところ、多くの国の貧しさに触れて、例えばチベットに学校を建てたり、壊れかけた自転車を修理してアフリカに送ったり、履けなくなった靴を大量に難民に送ったりという実践はあった。

川坂実践も同じように、「子供服 集めよう 届け隊」を結成している。そのきっかけはパレスチナの小学校とのビデオレターの交流と難民の存在を知ったことだった。また、某服飾メーカーから難民の子供たちは服が不足している、という出前授業を行っていた。

しかし、子供服は容易に集まらない。そこで自分たちに何ができるかを考えて、毎月難民新聞とポスターを作り、町内会の回覧板に載せたり、掲示板に貼らしてもらったりした。さらに使用済み歯ブラシ回収運動にも参加した。そうした動きが功を奏して市役所に回収ボックスが設置されたり、市長のHPに掲載されたりした。

だが、この実践に注目するのは、やがて子供たちは「服を届けるだけでは何も生まれない。難民が生まれない世界にしないと。そのために何かできないか」と考え出したことである。そこから難民が生まれる原因を調べ始めた。

紛争や気候変動、水不足、食料不足などで多くの難民が発生することを知る。それは自分たちの生活や行動にも関わっていて、自分たちの生活などを少しでも変えることが難民解決の糸口になると考える。

その調査結果を学習発表会や二分の一成人式で保護者や地域の人に発表した。「将来の夢は気候変動をなくし、難民のいない世界にすることです」と。そして、駅前でビラを配る企画までしたが、コロナのせいで中止になった。しかし、その願いは子供の希望で地元メディアが取り上げ、発信されたという。

この実践は「SDGs×総合的学習」として行われたものであるが、保護者や地域、市役所や地元メディアを巻き込んだスケールの大きいものである。その基本は、難民問題という「認識」を深めただけでなく、自分たちができることを、という「行動」を伴っている。4年生としてそこまでやるか、と思わせるものがある。「認識」と「行動」の統合である。それが素晴らしい。

今はコロナ禍のために学校の教育活動は縮小傾向にあるが、近未来の教育は子供が望む自立的な学習活動が多彩に展開されると考える。期待が大きく膨らむのである。

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