【クオリティ・スクールを目指す(183)】進度にこだわる教師たち

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
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子供の学びが無視される

やはり心配だったことが起き始めた。休校で大幅な遅れとなった学習内容だが、今年度中に取り戻すことは不可能なことから、2年先までの指導で埋め合わせるとされた。

しかし、教師の中には子供の理解はそっちのけで、ひたすら進度のみを気にしている教師がいるという。

「先生一人で授業しているみたい」と、子供が言うほど「高速」で進む授業がみられると琉球新報(9月18日)は伝えている。

例えば中3の英語で、教師から「線を引いて」と指示があって教科書に蛍光ペンで線を引いていると、教師はその間も教科書を読み進め、全く追い付かないという。また、理科の「磁界」の単元は3時間で終了し、ほとんど理解する余裕はなかったという。

恐らくは、多くの教師は単元の授業時数を減らして進度を確保したいという思いがあると考える。行政も2割程度は、家庭での自学自習で扱えるようにとしている。その結果として、子供の学習の程度を確認しないまま単元を終えようとする。「磁界」の単元3時間は極端だが、かなりの縮減が実施されていると推測できる。

そして、どんな形であれ単元を終えると「教えたこと」とされるのである。「教科書の内容を教えなければならないという考えは教師に染み付いている」というのは確かなようである。

学校再開後の授業展開で心配だったのは、学習の遅れから教師主導に陥らないかということだった。教師主導で授業を展開すれば進度の確保は安易にできる。しかも、単元展開は教科担任に任されているのである。

周知のように新学習指導要領はアクティブ・ラーニングを基本とする「主体的・対話的で深い学び」の学習展開が期待されていた。それがほとんど棚上げされて、進度だけが重視される結果となるのではないか。

恐らく教師は、子供の確かな学びを実施したいが、時間不足で学習内容を理解させるだけで精いっぱいと考えているであろう。遅れがちな子供にも丁寧に教えたい、と考えても余裕がない、と。一人一人の学びに応じたきめ細かな配慮が極めて難しくなっているのではないか。

だが、解決の方策はある。コロナ休校で多くの教師が自覚したのは、対面でない学びの状況での子供の自学する姿であった。家庭でのワークやオンラインで提供される課題に自力でチャレンジする姿であった。

そうした子供の学習「力」を考えれば、単元展開の工夫によって子供の学習参画を促す方略が見いだされる可能性は大きいのである。進度のみにこだわるのでなく、学習に自力でチャレンジする課題づくりなど、創意工夫にこそこだわりたい。

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