【クオリティ・スクールを目指す(185)】沖縄県の学力最下位脱出記

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
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県全体の底上げがすごい

2007年、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が実施され、沖縄県は最下位だった。学校関係者の落胆は大きかった。1972年に日本に復帰したあと全国学力テストがあって46位とかなりかけ離れて最下位だった悔しさから、国語と算数のワークを県教委が作るなどして指導に力を入れていたのである。

その最下位が6年続いた。

沖縄は島が多い。小規模校も多い。容易に集まれない。研修する機会も難しい。他県とは異なる風土がある。さらに貧困家庭が多い。

学力最下位からの脱出は不可能のように思えたであろう。他県は沖縄以下に絶対ならないと差別視し、沖縄への転勤者も家族同伴を避ける風潮があった。学力最下位という屈辱の思いが続く。それが7年目(14年)、突然小学校の学力テストが24位に跳ね上がる。県民ですら驚きだった。その後、さらに上がり続けて19年には全国6位になった。奇跡に近い、という思いすらする。

その躍進の様子を諸見里明・元県教育長が『学力テスト全国最下位からの脱出』(学事出版、2020)でドキュメント風に書いている。沖縄の取り組みの様子が鮮明で非常に興味深く感動的である。

何よりも学力トップの秋田県に学ぶため教員の人事交流を行い、授業の在り方や「家庭学習ノート」などを取り入れる。

だが、最も重要だったことは、13年に県教委が年度途中で「学力向上推進室」を設置して市町村の学校訪問という直接的な指導に取り組んだことである。その経緯がまた興味深い。諸見里教育長の信念が実現する。

直ちに県教育長自らがへき地小規模校を訪れるなど最下位脱出の先頭に立つ。県教育センターの出前授業も極めて多い。県が先導することで市町村が積極的に動くようになった。各学校の授業が変わり始めた。

実のところ、学力テストの順位を公表して学力向上を目指す県や市町村がみられるが、向上のメカニズムは必ずしも明らかではない。ただ、学習状況調査などの子供の学びの姿勢の分析を通して、学習力を高める工夫を加えることで重層的な指導が生まれる。

沖縄県の場合、県独自の学習到達度テストで子供の学びの姿勢や長所・短所などを学校ごとに分析して提示したことの意味は大きい。それが授業や家庭学習に結び付く。

ともあれ、沖縄県は学力テスト最下位脱出によって、それ以上の大きなことを学んだのではないか。さらに子供に身に付けたい「力」は変わる。今後の沖縄県に期待したい。

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