【クオリティ・スクールを目指す(186)】フロント・ランナーが語る教育革新

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
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近未来にどう向き合うか

教育新聞編『FUTURE EDUCATION! 学校をイノベーションする14の教育論』(岩波書店)を読んだ。

新聞紙上では断片的で印象の薄いものもあったが、今回は一挙に読み、それぞれが興味深かった。何よりもとても面白かった。

冒頭は、ノーベル賞受賞者の野依良治氏である。氏は「今の教育に本気で怒っている」として教育の現状を断罪する。インタビューは4時間に及んだというが、それほどにわが国の課題は根深いのである。

だが、わが国の近未来に向けた教育に希望はないのか。実のところ、第2章以下はまさに近未来の新たな教育への実践的な提唱であって、野依氏の危機感とのコントラストとなっている。近未来は決して暗くはない。

例えば、第2章は「学校のイノベーション」であるが、変わりにくいとされる学校の現状から民間公募の日野田直彦校長は、「チャレンジしましょう」という、たった一つの業務命令で教員を動かす。また、遠藤直哉教頭は、進学校でも受験向けの授業をせず「何を教えるかではなく、どう興味を持たせるか」を重視して実績をあげている。木村泰子元校長は、必要なのは「働き方改革」ではなく、「学び方改革」であるとして、「10年後に必要な力」を身に付けることだという。

さらに第3章は、まさに「近未来の教育」で、山口文洋氏のリクルート・オンライン学習サービス「スタディサプリ」、神野元基氏のAI型教材「Qubena(キュビナ)」の登場である。最近、GIGAスクールなど端末機器の活用が学校の課題となっているが、両者の実践をみるとデジタル機器の活用が子供の学習の在り方や教師の役割を大きく変えつつある。

また、世界中の優れた功績のあった教員に贈られる「グローバル・ティーチャー賞」に応募してトップ10に選ばれた高橋一也氏など、国際的なチャレンジにも注目したい。

最終章は「ポストコロナの学校像」である。

横浜市の民間人校長から広島県教育長に抜てきされた平川理恵氏、読解力低下の課題重視として影響力が大きい新井紀子氏、YouTubeを学校教育に浸透させる葉一氏が登場する。

このようにわが国の教育界の多彩なフロント・ランナーがそれぞれの姿勢で近未来に立ち向かう。彼らの目指しているものは、一様に従来とは異なる子供に身に付けたい「力」のありようである。学校そのものは残るが、内実が大きく変わることを示唆している。その変化の兆候はすでに顕在化し始めている。

ところで、フロント・ランナーとの出会いで感じたことは、教育新聞がよくぞ発掘してくれたという思いであった。おそらくは他にもフロント・ランナーを目指す人材がどこかに存在しているであろう。こうした発掘が次の人材を生み出す契機にもなるのではないか。

今後への期待、大である。

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