【クオリティ・スクールを目指す(189)】ベネッセ・親子20万組調査

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
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自立の力をどう身に付けるか

コロナ休校中、多くの教師が気付いたことは家庭における学習格差であろう。オンラインを実施しても家庭が受け入れる機器に格差があっただけでなく、保護者の子供への生活や学習への関与に多様な傾向がみられたであろう。

対面授業では表面化しない家庭の課題が教師の新たな教育の視点になったと考える。

今回、ベネッセが提供する親子2万組パネル調査は、保護者の傾向など新たな知見を示すものとなっている(『子どもの学びと成長を追う―2万組の親子パネル調査から』(編集:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所)勁草書房2020)。

周知のように家庭に関する調査は極めて少ないが、ベネッセ調査は小1から高3までの学年全てについて保護者を含めて2016年度から経年で調査・分析している。希有な調査である。

教師が活用したいデータもたくさんある。

例えば、コロナ休校中、新たな学年の学習内容が課題として提示されたが、チャレンジできた子供はどの程度だったろうか。調査では、「上手な勉強の仕方が分からない」が小学生は50%前後であるが、中・高校生は60~70%もみられる。

また、保護者の子供への期待は「知識外の多様な力(思考力・判断力・表現力など)を身に付けさせたい」「子供には今のうちにいろいろな体験をさせたい」が小1も含めて95%前後である。次いで「英語力」が80%前後である。

教育格差も調査対象である。社会経済的地位(SES)によって学習時間と学力の格差が広がっているとされるが、むしろ格差に基づいて個々の子供の教育保障をどうすべきかが課題である。学校・学級に混在している多様な児童生徒にどう対応するか、教師の役割を改めて考える素材もまた提供されている。

ところで調査を通して考えたい基本は、本書に示されているように、子供個々が生活や学習を通して、自立に必要な力をどう身に付けていくか、である。

本書の最後にベネッセの木村治生主席研究員が、「SESは教員や子供自身ではいかんともしがたい」とし、「学習量を増やす」のではなく、「学習の質的側面の改善に目を向ける必要がある」と述べているが同感である。

コロナ休校によって子供に自己学習力を見直す傾向が強くなった。GIGAスクール構想の導入で授業がハイブリッド化される。また、学力のみでなく非認知能力の強調によって、協働による価値創造の学習や個別最適化の学習が進展する可能性も大きくなった。

新学習指導要領はスタートでつまずいたが、新たな学校づくりにどうリセットするか、それが今後に続く課題である。さらにベネッセ調査の継続・発展についての期待も大きい。

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