【クオリティ・スクールを目指す(190)】端末機器の一挙導入の課題

教育創造研究センター所長 髙階 玲治
この連載の一覧

浸透度による格差増大を最小に

ここに1冊の図書がある。『無理なくできる学校のICT活用』(長谷川元洋監修・著/松阪市立三雲中学校編著 学事出版2016)である。GIGAスクール構想が盛んに言われているが、その先駆けとして極めて参考になる図書である。

この図書を私は最近知ったのだが、奥付をみると初版は16年で、その後版を重ねている。ずいぶんと早いICT実践の図書である。

実は三雲中がICT教育に取り組んだのは11年度だという。当時、総務省の「フューチャースクール推進事業」、文科省の「学びのイノベーション事業」の指定で、生徒1人1台のタブレット、無線LANなどのICT環境が整備されICT機器の利活用を進めてきたという。

極めて先進的な取り組みである。

ただ、私が疑問に思ったのは、当時総務省や文科省が学校のICT事業を立ち上げながらなぜ全国展開へと拡充しなかったのか、ということである。

10年前、教育の情報化は必須の課題として、地方交付税による予算措置を行っていたはずなのに、なぜか広がらなかった。その背景には教育現場も、地方の首長も議会も、みんなICTの重要性をよく理解できなかったせいであろう。

確かに教育現場は理解不徹底だった。全国連合小学校長会の17年調査ですら「教育改革で重く受け止めていること」では、「英語の教科化」は66・5%でトップ、「ICT教育の推進」はわずか11・0%であった

わが国のICT教育は国際的にみても最低水準である。しかし、10年前から政策的に拡充していればコロナ休校でも、オンライン教育など積極的な指導が可能だった。失われた10年であろうか。

そして今はGIGAスクールが学校に一挙に展開しそうである。やはり端末機器の1人1台導入が大きい。学校のICT活用への期待は高まっている。ただ、その取り組みは各学校によってかなり差異が生まれそうである。

実は先進諸外国の端末機器活用の授業を読んだが、課題を与えた後はグループによる端末の自由な操作で、疑問が残るものであった。

わが国の場合、急激に活用が進むとしても、単元や授業展開に一定の流れを考え、目標へのアプローチを重視する傾向が強いことから端末機器の活用は子供の自由に任せず、かなり抑制的になるのではないか。

それは決して悪いことではなく、ツールとしての端末機器の活用であって、単元や授業展開がどう柔軟に展開されるか、そこに効果的なICT活用への期待がある。

ただ、各学校においてのICT教育の推進は、教員個々の理解や受容の差、技術能力の差、設備の差や組織体制などの要因によって取り組みに差が生じる。そうした学校の内部要因の課題をどう解決するかが重要である。

この連載の一覧