【ICTと教育格差(2)】コロナ禍で加速化した「GIGAスクール構想」

多喜弘文 法政大学社会学部准教授

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 前回も触れた通り、ICTの導入はコロナ禍に対応するために突如要請されたわけではない。第2回では、新学習指導要領においてICTにどのような役割が与えられており、そのための環境整備がどう進められる予定であったのかを振り返る。

学校のICT環境の整備状況(2020年度は速報値。文科省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」より筆者作成)

 新学習指導要領は、新しい時代に必要となる資質・能力の育成を目的に据えている。そのために必要とされるのが「主体的・対話的で深い学び」である。ICTはこの学びを実現する手段の一つで、これを操る情報活用能力が言語能力などと同様の「学習の基盤となる資質・能力」として位置付けられている。学校のICT環境を整え、それを適切に活用した学習活動の充実に配慮することが、総則に明記されている。

 この新学習指導要領の実施を見据え、文科省がICT環境の整備に向けて示したのが「GIGAスクール構想」である。この構想では、1人1台学習用端末と高速大容量の通信ネットワークの全国一律整備が政府の全体方針および教育目標との関係で明確に打ち出され、2018年度から5年間、単年度1805億円の地方財政措置を講じる計画が策定されている。

 ところが、感染症拡大によって、「GIGAスクール構想」は加速化した。当初の計画が前倒しされ、2020年度にはICT環境の整備に合計4819億円が計上された。図から読み取れる通り、コロナ禍を経験した2020年度(2021年3月1日基準)の教育用PC1台当たりの生徒数は急速に1に近づいており、折れ線で示される研修受講率も上昇している。本来2022年度末を予定していた1人1台の学習用端末と高速大容量の通信ネットワークの整備は、ほぼ全ての小中学校で実現した。

 本連載で注目しておきたいのは、学校へのICT導入の計画が丸2年も前倒しされた事実と、ICTに求められる役割の変質である。新学習指導要領は、オンライン授業を全面的に求めるようなものではなかった。また、未曽有の事態への対処を余儀なくされる中、多くの学校にICTを実質的な意味で授業に生かす方法を慎重に吟味する余裕はなかった。

 とにかく、目の前の児童生徒の「学びを止めない」ため、「できるところから」という形で緊急事態への対応がなされたのが2020年度の学校現場の状況だったと考えられる。こうした状況において、個別の学校が精いっぱい行った対応は、全国レベルで見ると教育格差の問題とどのように結び付いていたのだろうか。

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