【ICTと教育格差(3)】教育にICTを利用してこなかった日本

多喜弘文 法政大学社会学部准教授

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 前回解説したように、ICTを操る情報活用能力は、これからの社会に必要な学習の基盤となる資質・能力の一つとして位置付けられている。ところが、日本はICTの教育利用において後進国であるという認識が示されてきた。この根拠として文科省が挙げているデータの一つが、OECDが15歳の生徒を対象に3年ごとに実施するPISA(生徒の学習到達度調査)の2018年版である。

OECD加盟国のICTの教育利用(OECD「PISA2018」の個票データより筆者作成)

 図に示した通り、日本の高校1年生が学校の授業でデジタル機器を使う頻度は、OECD加盟国の中で最下位である。この他に、生徒がコンピューターを他の生徒と共同利用する割合や、宿題に使う割合でも同じ順位となっている。教員を対象としたOECDの別調査(TALIS)でも、中学校教員が学校で生徒にICTを活用させる割合が、加盟国中最下位であった。日本はこれまでICTの教育利用に他国より消極的だったと言える。

 それでは、ICT機器の家庭での利用はどうだろうか。同調査によると、デスクトップ型、ノート型、タブレット型のデジタル端末を持っている生徒の割合はそれぞれ7割近くに上る。このデータも、やはり他国と比べて多いとは言えない。とはいえ、インターネット環境はほとんどの家庭で整備されているし、チャットや1人用ゲームで遊ぶ生徒の割合はOECD加盟国の中でトップクラスである。スマホの扱いやメールやチャットの認識については議論の余地があるが、それなりに多くの生徒が家庭ではICTを利用していたと言える。

 以上より分かるのは、次の事実である。日本は確かに教育ICT後進国であった。前回紹介したように、学校のデジタル端末配備やネット環境整備は2019年度まで少しずつ進められていた。とはいえ、1人1台端末の配備は2022年度まで待つことになっていたし、プログラミングの授業を別とすると、授業でのICT利用もこれから試行錯誤していく段階だっただろう。

 そうだとすると、2020年2月末に感染症拡大の影響で一斉休業をせざるを得ない状況に陥った時、いち早くICTの教育利用に踏み切れたのはどのような学校だったのだろうか。生徒の多くがICT機器になじみを持つ学校とそうでない学校で、対応の差は生じなかっただろうか。次回は、この点を考えるための材料として、コロナ禍前夜における生徒の家庭のICT環境と家庭の社会経済的地位(SES)との結び付きを見ていく。

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