【ヤングケアラーの子どもたち(1)】ヤングケアラーとは何か

田中 悠美子 立教大学助教・日本ケアラー連盟理事

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 こんにちは、立教大学コミュニティ福祉学部の田中悠美子です。今回、この10回の連載を通じて、最近話題になっているヤングケアラーをテーマに書かせていただきます。全体を通して、ヤングケアラーとは何か、ヤングケアラーの実態調査から見えてきたこと、そして、対応や支援について考えていきたいと思います。特に学校の中で、家族のケアをしている児童生徒さんたちの存在にどのように気付き、どう対応をすればよいのか、理解をしていく糸口になればと思っております。

ヤングケアラーの例

 今回はまず、ヤングケアラーの概念について書きたいと思います。まず、ヤングケアラーは、日本ではまだ法令上の定義がありません。一方、世界各国ではヤングケアラーについて正しく理解し、支援するための取り組みが行われています。

 具体的な例として、最も先進的な国であるイギリスでは、「1989年子ども法」第17条において、地方自治体においてサービスが提供されなければ健康や発達を維持する機会を持てない状態の児童、健康や発達が著しく損なわれる状態の児童を「要支援児童」として定義し、行政が子どもとその家族に支援を提供する責任を明確にしています。さらに、「2014年家族と子どもに関する法律」第96条において、ヤングケアラーを「他の人のためにケアを提供している、または提供しようとしている、18歳未満の者」と位置付けて、「ヤングケアラーのニーズに関するアセスメント」を実施する体制を整えています。

 日本では、一般社団法人日本ケアラー連盟において「ヤングケアラーは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」との説明がなされています。

 ケアを要する人の多くは、親やきょうだいですが、祖父母や他の親族などの場合もあります。また、身体障害や知的障害、認知症や精神疾患、アルコール依存症、がんなどの慢性疾患の状態にある人をケアするケースもあります。図にあるように、ケアのタイプも多様です。

 2021年3月に立ち上がった国の「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」は、ヤングケアラーを「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている児童」としました。これによって、病気や障害がある家族をケアしている子どもだけでなく、幼いという理由のみできょうだいの世話をしている子どもも含むという方針が示されたことになります。

 このように、日本においては政策課題として注目され、ヤングケアラーという言葉によって、家族のケアを担う子どもたちとして意識付けされた状況となりました。

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【プロフィール】

田中悠美子(たなか・ゆみこ)
立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科助教。社会福祉学博士、社会福祉士、介護福祉士。現職では、社会福祉士養成に携わる。また、一般社団法人日本ケアラー連盟理事、ヤングケアラープロジェクトに参画し、ヤングケアラーの研究や啓発、政策提言などを行う。専門領域は、高齢者福祉、地域福祉。研究テーマは、若年認知症者・家族のソーシャルサポートネットワークづくり、ケアラーの支援。

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