【高校情報科のアップデート(2)】小学校のプログラミング教育

鹿野利春 京都精華大学教授

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 文部科学省に着任してからしばらくして教育課程企画室に呼び出され、「小学校のプログラミング教育についてどう思われますか」という相談を受けた。文科省には、「ライン」とよばれる職員の部門と、教科調査官のように外部からの専門家が勤める部門がある。そういうわけで、教科調査官は何かにつけて職員から相談を受ける。国立教育政策研究所自体が、そのためのシンクタンクとも言える。

 「小学校のプログラミング教育」については、「ぜひやるべきです」と即答したような記憶がある。今、思えばそれは、高等学校の情報科を代表した発言ということになると思うが、正直なところ、当時はそこまで考えていなかった。小学校には各教科等の教科調査官はいるが、プログラミングの専門家はいない。プログラミング教育を扱う立場の者は、中学校技術・家庭科技術分野の教科調査官と、高等学校の情報科教科調査官しかいなかったので、そのような相談を受けたのだと後で思い至った。ちなみに、詳細は省略するが、「小学校のプログラミング教育」についても責任を負っている。後に「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」の作成について協力することになった。

 何かにつけて、「教科調査官はどう思われますか」「〇〇についてはどのように考えればよいですか」という質問を職員から受ける。施策を進める際には根拠が必要であり、教科調査官に相談することが根拠になるのだろうと思う。文科省の中では、信頼され尊敬されている役職と言えるだろう。

 教科調査官として間違ったことは言えないし、発言がぶれてもいけない。また、世界の流れと反することは日本として得策ではないが、一方で日本の現場の状況にも配慮しなければならない。最新のコンピューター技術や、企業のM&Aの情報もつかんでおく必要がある。また、考え過ぎて発言の機会を逸しても、それは職責を果たさなかったことになる。信頼と尊敬については、同時にこのような義務も負うということが次第に分かってきた。

 教科調査官は、各教科等に一人しかいないので、替えがきかないから休むわけにはいかない。その上で教科のことには全て答える必要があり、会議などで必要な場合は、躊躇(ちゅうちょ)なく発言しなければならない。また、その発言には一貫性が必要で、ぶれも間違いも許されない。職員がよりどころとするには、これくらいの信頼性が必要である。

 そこで、体を壊さない程度に情報収集に努め、発言は「どうしたら子供たちが幸せになるか」ということのみを考えるようにした。原理原則に沿った行動を取ることが、一貫性を保つ最も有効な方法である。幸い、私には忖度(そんたく)するべき人も組織もなかった。

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