【ヤングケアラーの子どもたち(2)】なぜ、ヤングケアラーが注目されているのか

田中 悠美子 立教大学助教・日本ケアラー連盟理事

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 ヤングケアラーが注目をされているのは、なぜなのでしょうか?家族のケアを担う子どもたちは、これまでも存在していたはずです。私なりに考えている3つの要因をお伝えしたいと思います。

①マスメディアの影響

 2020年10月28日付の毎日新聞が報道した神戸地裁の内容に衝撃が走りました。「たった1人の介護の果て なぜ22歳の孫は祖母を手にかけたのか」という題の記事で、社会人1年目の若い女性が認知症の祖母を殺害してしまった状況やその背景が書かれていました。この女性は孤立した状況で介護を背負い、睡眠不足、うつ病の診断を受け、身も心も限界の中、生活をしていたそうです。この痛ましい事件が大きく社会を動かし、神戸市では21年4月に「こども・若者ケアラー支援担当」を設け、専任の課長を配置し、18歳未満の児童に限らず20代の若者も含めて相談体制を整備しました。

②菅内閣が掲げた政策

 2020年9月に就任した菅義偉首相の発言の中に、ヒントがあるのではないかと思います。ここで、子どもや若者も含めた「全世代型社会保障」という考えを具体的に推進していく一つの切り札として、「福祉・介護・医療・教育の連携が求められるヤングケアラー支援」が政策課題として掲げられ、注目されたのではないかと感じています。

③誰もがケアをする時代

 日本は2025年に団塊の世代が75歳を超え、介護や医療費などの社会保障費の急増が懸念されています。深刻な少子高齢化が進む中、ケアを必要としている人は増えています。その一方で、核家族化が進み、家族の人数が少なくなり、共働きが増えています。「平成29年就業構造基本調査」によると「介護をしている人」は627万6千人に上り、大人も子どもも誰もがケアをする時代になってきています。

 日本には、家族のケアは家庭内の問題であり、「家族で何とかしなければならない」という考え方があり、大人もSOSを出しにくい状況にあります。デリケートなことでもあるため、大人が担うようなケア責任を引き受けている子どもの存在は、自身も周りも気付きにくいのです。

 しかし、そのような子どもたちの未来を考えたときに、見過ごすわけにはいきません。そのために、「ヤングケアラー」という言葉を広め、社会全体で支援体制を築いていこうという動きが広がってきたと考えられます。

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