【ICTと教育格差(8)】ICT機器持ち帰りの地域間格差が意味するもの

多喜弘文 法政大学社会学部准教授

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 第8回では、2021年5月末に実施された「全国学力・学習状況調査(以下、全国学テ)」の公表情報を用いて、ICTと格差に関わる現在進行形の問題を、限定的ではあるが論じていくことにしたい。

ICT機器持ち帰りに対する学校方針と都市規模の関連(2021年全国学力・学習状況調査(小学校調査、市町村立学校のみ)より筆者作成)

 本連載では前回まで、20年度のコロナ禍の中で生じたICTの教育利用格差を、内閣府調査や文科省委託調査のデータで見てきた。21年に実施された全国学テは、悉皆調査では家庭の社会経済的地位(SES)を尋ねていないが、都市規模による格差は公表情報から確認することができる。

 全国学テの学校調査では、臨時休業時におけるICT利用を回顧的に尋ねており、やはりそこからは都市規模による格差を確認できる。図は省略するが、例えば家庭学習に「学校作成の学習動画」「教育委員会が作成した学習動画」を活用した課題を課したかどうか、あるいは休業中に「学校のインターネット接続の通信速度」「通信環境」や「家庭の周辺機器」「家庭の通信環境」に問題があったかどうかは、いずれも大都市ほど有利であったことが分かる。

 他方、21年5月現在の状況はどうか。こちらについては、ICTでの授業準備や研修、あるいはやりとりにおける活用に、はっきりと都市規模間格差は確認できない。1人1台の学習用端末の学校配備や高速大容量の通信ネットワーク整備の実現、臨時休業による年間授業計画の圧迫状態からの脱出により、地域間格差が縮小したことがうかがえる。

 だが、その中で都市規模による差が比較的大きく生じているのが、図に示した項目である。配備されたICT機器を児童生徒に持ち帰らせている学校は、大都市や中核市に多い。その他の地域では、持ち帰りを禁止している学校の方が、家庭利用を促す学校より多い。5月時点で配備済みの学校に限定すると、この差はさらに大きくなる。

 学校での活用の地域間格差が縮小しているにもかかわらず、学校外でのICT教育活用には差が見られる。地方では、通信費用の負担や壊した場合の対応を巡り、保護者などの理解を得にくい状況があるとの報道もなされている。これは、ICTになじみのある大人が地域や学校に多いかどうかという問題であり、保護者の社会経済的地位に基づく教育格差とも共通する論点である。この問題は、学校内だけではなく学校外との関わりを視野に入れるべき教育格差の問題であり、校長や教職員の努力だけに還元することはできない。

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