【ICTと教育格差(9)】「画一的な対応」ではなく、根拠に基づく「積極的な支援」を

多喜弘文 法政大学社会学部准教授

この連載の一覧

 本連載ではこれまで、さまざまなデータを紹介しながら学校におけるICTの導入や利用が教育格差と結び付いていることを示してきた。これらは、ICTが教育格差を広げていることを因果的に示すわけではない。明らかになったのは、ICTを教育利用する機会が、現時点において児童生徒の「生まれ」に一定程度制約されているという事実である。

子どものいる回答者の臨時休業期間中の働き方へのコロナ禍の影響(男女別・学歴別)(東京大学社会科学研究所「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査 2020年 ウェブ特別調査」(https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/socialresearch/pr/21PressRelease.pdf )より筆者作成※)

 第1回でも述べたように、筆者はICTが教育格差を必ず拡大させると主張したいわけではない。だが、「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」といった表現が、ICT導入による格差縮小をイメージさせるとすれば、楽観的な期待には懸念を表明しておきたい。

 例えば、数十年前に議論されたように、インターネット利用の拡大が知識へのアクセスを平等化させる可能性は、理屈上確かにある。しかし、実態としてそれが生じたかどうかは明らかではない。この問題と同様に、教育のICT化が全ての子どもたちの可能性を引き出すことに貢献するかどうかは、適切な社会調査によって実態を把握していくべきである。

 これまでも言及してきた通り、学校現場で生じる教育格差は、学校の対応だけが原因で生じるものではない。その学校に通う児童生徒の家庭の社会経済的条件、地域の産業構造によって、ICTとの親和性は異なる。しかも、図に示すように、コロナ禍はもともと不利な条件の子どもをより不利にする方向で、持続的に影響を及ぼしていることが予測されるのである。

 現状では、ICTの教育利用に学校差や地域差が生じている。その差のうち、少なくとも社会経済的な条件と系統的に結び付いていることが確認される部分を、学校や自治体の努力や方針の違いに還元することはできない。学ぶ機会を保障するためには、政府による「画一的な対応」ではなく「積極的な支援」が必要となる。放任するならば、「生まれ」に基づく教育格差は拡大してしまうだろう。

 本連載ではこれまで、2018年から2021年に実施されたさまざまな社会調査データを使って、ICTに関わる教育格差を示してきた。強調しておきたいのは、仮にこうしたデータがなければ、教育格差が見過ごされていたということである。見なかったからといって、それがなくなるわけではない。臭い物にふたをしようとするのではなく、まっとうな社会調査を実施し、根拠に基づく適切な支援をしていくべきである。

 ※同調査の詳細と基礎的な分析結果は、石田浩・石田賢示・大久保将貴、「「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査 2020 年ウェブ特別調査」 分析結果報告――コロナ禍に見る人々の生活と意識」2021年2月18日プレスリリースを参照。

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集