【ヤングケアラーの子どもたち(6)】子どもの権利とヤングケアラー

田中 悠美子 立教大学助教・日本ケアラー連盟理事

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 ヤングケアラーは、自立的に生きる基礎を培い、人間として基本的な資質を養う重要な時期であるにもかかわらず、心身の健康と生活環境の悪化に苦しむ可能性があり、教育や訓練の機会を逃すことがしばしばあります。ヤングケアラーにかかっている負担について考えていくときに、子どもの権利条約の考え方は参考になります。

 子どもの権利条約は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。前文と全54の条文から成り、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。定められた子どもの権利は大きく分けて4つ、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」です。1989年の国連総会において採択され、1990年に発効し、日本は1994年に批准しました。

 ヤングケアラーが家族のケアをしていることで、学校を遅刻してしまう、宿題が提出できない、欠席してしまうような状況がある場合は、第28条「教育を受ける権利」が守られていない状況にあると言えます。また、ケアをしたいか、したくないかという「意見を表す権利」が、第12条にあります。第31条には「休み、遊ぶ権利」があるので、安心して休むことができる環境や、好きなことをして友達と遊ぶ機会が確保される必要があります。さらに、子ども自身が健康で過ごせるように、医療や社会的サポートを受けることができる第24条「健康・医療への権利」があります。

 2016年の児童福祉法改正では、「全ての児童」ということが規定されました。これまで、虐待などにより命が危ぶまれて保護が必要な子どもたちを「要保護児童」として、支援の対象としてきましたが、法改正によって「児童の権利に関する条約の精神」にのっとり、「その心身の健やかな成長及び発達(中略)を等しく保障される権利を有する」と児童が権利行使の主体であることが明記されました。これを受けて、今後は全ての児童の最善の利益を優先することを考えて、対応していくことが重要になります。

 子どもが家族のケアをすること自体が問題なのではなく、お手伝いの延長線上に、ケアが過度な負担になり、その子が心身の状態を崩してしまうことが問題なのです。そのような子どもたちを「要支援児童」として認識して、適切に相談や支援をしていく必要があります。その際に、子どもの権利という考えに照らして、ケアをしている子どもが権利を奪われていないか、ケアをすることで生活への影響、学業や将来への影響が生じていないか、子どもの声に耳を傾けながら状況を丁寧に把握していくことが大切です。

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