【連載】校長のパフォーマンス 第62回 サーバント・リーダーシップ

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

アメリカの会社で、ある社員が他の部署に昇格することになった。その社員は、いままでの上司に「サーバント・リーダーシップをありがとうございました」と、お礼の言葉を述べたという。

サーバント・リーダーシップは聞き馴れない言葉であるが、わが国の企業にも徐々に浸透している。例えば、資生堂など。しかし、どのように考えたらよいであろうか。

もともと、「サーバント」と「リーダーシップ」は全く相反する意味がある。「サーバント」ですぐ思い浮かぶのは「召使い」である。他に、使用人、家来、従者、奉仕者などがある。一方、「リーダーシップ」で思い描くのは「管理・命令」で統率する強力なリーダーである。両者は相いれないように思える。1つの言葉にすると自己撞着のようにみえる。

この言葉は、アメリカのロバート・グリーンリーフの造語であるが(『サーバントリーダーシップ』英治出版2008)、賛同する学者も多く『7つの習慣』のコヴィーもそうである。

サーバント・リーダーシップは逆転の発想があって、これまで上司は部下に対して目標達成のために命令的な発想で対応してきた。それに対してサーバント・リーダーシップは上司が部下の自主性を尊重し、部下の仕事を成功に導くため、多様な仕方で支援する役割を行うのである。

上司は、組織全体のビジョンや目標を掲げるが、それを達成するのは個々の部下であるから、部下を支援することで、個々のやる気が生まれ、目標達成を目指す動きが強まるという。しかも部下は、リーダー行動を学ぶことで組織人としての自律的な態度が形成される。結果としてよい人間関係が生まれ、組織は活性化するという。
その意味で、サーバントとリーダーシップは矛盾しなくなる。

実は、サーバント・リーダーシップこそは学校に導入されるべきではないかと考える。
例えば現在、次期教育課程に向けてさまざまな論議が行われているが、2020年に一挙に新しい学校の教育課程が導入されるのではない。移行措置を含めて、多様な動きが伴う。

そこで校長は、学校を持続させるための組織基盤の確立を目指してリーダーシップを発揮する。ただし、その途中で校長は異動や退職になる可能性もある。

そこで校長は、数年を見通した経営視点から、個々の教職員が職務に応じた適切な遂行力を身に付けるために、単なるリーダーシップではなく、支援(サーバント)的な方略を行う。組織基盤に持続性を持たせるのである。

また、それは人を育てる要諦でもあって、例えば教頭が校長に昇進したとき、現校長へのお礼として「サーバント・リーダーシップをありがとうございました」と言われたら、それは校長冥利に尽きるのではないか。