本の力を復興に生かす 仙台市立七郷中学校

生徒の手で作った震災文庫 被災体験と読書をリンク

本の紹介を積極的に行う
本の紹介を積極的に行う

仙台市東部沿岸部を学区に抱く仙台市立七郷中学校は、震災時、仙台市で唯一在校生が津波の犠牲になった中学校である。

被災校の特色を生かした図書館経営を目指し、学校図書館内に「震災コーナー(通称「がんばらNight文庫」)」を設置したのは2015年のこと。授業で活用できる「震災・防災に関する図書資料」を整備するとともに、生徒が日常的な読書の中でさまざまな角度から震災を見つめ直したり、生きる力を得られる本を増やすことを意図したものであった。

背景には被災校としての逡巡があった。被災校において震災に関わる題材の扱いは、常にデリケートな問題をはらみ、細心の配慮を要する。傷の深さや大きさは物理的にも心理的にも生徒一人一人に大きな差異があり、震災に関わる授業の実施には、実は被災校ほど制約が多い。

しかし、経験した者だけに語れる言葉がある。被災した地域・学校だからこそできることがある。一人一人が自らの心の状態や経験に応じて学びを進められる授業づくりに「本の力」を生かせるのではないかとひらめいた。

震災文庫の設置を実現させるためには、狙いを明確に示し、周囲の理解を得る必要がある。「設置目的」と「想定される使用場面」を整理する一方で、「文庫名の決定」や「選書」に生徒の声を生かす段取りを決めた。

図書委員会を通じて全校生徒からアイデアを募り、決定した文庫名は「がんばらNight文庫」。文庫名の隣に「あんなにも悲しく心細かった3・11の夜、闇の中で見た星の輝きは私たちの心に一筋の希望をくれました。この文庫名には未来への希望を込めました」と、考案した生徒の一言を添えて表示した。

選書の場面では、ビブリオバトルの手法を活用して対話的に学びを深めるものとし、1年国語科に単元「震災文庫を作ろう~ビブリオバトルの手法を活用して~」を新設した。

実際の購入を前提とした選書に子供たちは沸き立った。そして、地域の図書館や書店を回り、実にさまざまなジャンルの本を持ち寄った。自らの責任で選んだ本の魅力を、自らの被災体験とリンクさせながら真摯(しんし)に語り合う姿に、改めて本の力と子供たちの可能性をみた。

実践の概要は以下の通りである。

(1)コーナー設置の目的、本を使用する人、使用場面を明らかにする。

〔設置目的〕▽授業で活用できる「震災・防災に関する図書資料」を整備する。▽さまざまな角度から震災を見つめ直したり、生きる力を得たりできる本を増やす。

〔人〕生徒・教師

〔場面〕防災に関わる授業、日常的な読書

(2)本を選ぶ視点を示す。

▽文庫名(生徒が考案)に込められた思いを知り、選書のよりどころとさせる。▽一人一人の被災体験や読書力に応じ、ジャンルは自由に選ばせる。▽「仙台版防災副読本」の項立てを参考に、さまざまな切り口で本を選ばせる。

(3)「本の探し方」や「本と出会える場所」を示し、書店や公共図書館へ足を運ばせる。

▽長期休業を利用して、地域の図書館や市民センター、書店を訪問させる。▽仙台市図書館や図書室の蔵書検索の方法、インターネットでの本の探し方を教える。

(4)選んだ本についてプレゼンテーションを行ったり語り合ったりする場として、ビブリオバトルの進め方を取り入れる。

▽互いの選書やプレゼンテーションを参考にし、多くの本と出会い、自らの読書生活を振り返る一助とさせる。

現在、「がんばらNight文庫」には、「写真記録」「手記・作文」「ボランティア・支援」「備え・防災」「宮城・仙台を知る」「心と体」「読み物・詩歌・絵本」「福島・放射能」といった、生徒が選んだたくさんのサインと、120冊ほどの本が並んでいる。地域学校合同防災訓練の際には、「がんばらNight文庫」の絵本を、小学生や幼児に向けて中学生が読み聞かせる取り組みも行った。

今後は蔵書の充実に努めながら、コーナーのさらなる活用場面を生徒と教員が一丸となって模索していきたい。(主幹教諭・中川美佳=現・仙台市立八乙女中学校)


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