4つのステップで取り組む ESDで自ら考え行動する力

及川幸彦宮城教育大学国際理解教育研究センター協力研究員に聞く

宮城県気仙沼市立の小学校教頭を務めていたとき、東日本大震災に遭った及川幸彦氏。当時の緊急対応、その後の復興体験などから、4ステップの防災教育を考案し、現在は、日本ユネスコ国内委員会委員、宮城教育大学国際理解教育研究センター協力研究員として、その啓発に努めている。防災教育の要旨とESD(持続可能な開発のための教育)との関連などについて聞いた。

――提唱している防災教育の概要について説明を。

東日本大震災の教訓を生かし、4ステップから成る防災教育を考案した。防災教育を、単なる避難や訓練だけはなく、災害のメカニズムから生活に与える影響を知り、その上で、それを軽減して備えるという行動につなげ、さらには被災したら地域の復興を目指す。こういうプロセスとしての防災教育を考えていかなくてはならない。そのことを、被災体験から学んだ。

第1のステップは、災害への知識と理解だ。地震にせよ津波にせよ、どのようにして起こるか。メカニズムや特性を知るべき。知識がないと避難の際、誤った判断になってしまう。津波のメカニズムで考えれば、津波は波長が長く、押し寄せる波がなかなか引かない。30分くらいは内陸に入り続ける。サーフィンに乗るような波とは全く違う。海全体が持ち上がる感じだ。これではいくら逃げても逃げ切れない。膝下の波でもすくわれてしまう。

次のステップは、思考力、判断力。因果関係を認識する力をつける段階だ。同じ地震、同じ津波でも場所によって被害は異なる。宮城県でいえば、三陸のような高台と仙台平野では逃げ方が違ってくる。三陸の津波は高いので、逃げる場合は高い方、より高いルートをとる。平らな仙台平野では沿岸から遠く逃げる。もしくは高い建物にのぼり、籠城して助けを待つのが賢明だ。

立地による被災のイマジネーションをどれだけ持てるか。それがポイントとなる。学校ごとに地域に合った災害対策を考えておかなければいけない。
3つ目のステップは、立地をもとにした減災の備えだ。被災状況を想定して食糧などを備蓄するが、東日本大震災では、建物の1階に備蓄していたケースが多く、津波で水浸しになり、使えなくなって困窮した。備蓄する倉庫は高台に作っておく必要がある。平地では、建物の上層階に置くとよい。

4つ目は、復旧、復興である。防災は避難して終わりではない。その後、復旧、復興を図らなくてはならない。その過程で貢献できる人材を育てておくことが強く求められる。

昨年3月に、仙台で第3回国連防災世界会議が開かれ、新しい国際的防災指針「仙台防災枠組2015―2030」が採択された。そこで掲げられている「ビルド・バック・ベター(Build Back Better=よりよい復興)」の考えを目指さなければならない。元に戻すのが復旧。復興はそこに価値をつけるということだ。

――気仙沼市では、平成17年からESDに取り組み、震災当時は市内全小・中・高校がユネスコスクールとなるなど、ESD先進地域であったわけだが、ESDは震災に対し、どのような効果をもたらしたか。

子ども、教師、保護者が自主的な行動をとれるようになっていた。ESDは問題解決的な学習、探究的な学習、体験的な学習、地域に根差した学習、これらを総合的、横断的、学際的に実践していく。これらの学習者主体の学習が防災教育に応用された結果、自ら学び、能力を高め、命を守るための主体的な判断、意思決定の行動に結び付けるという防災教育の質を高める成果につながったと考えている。

下校した子どもの中には、自分で判断して学校に戻って助かった命があった。保護者、地域の人が助言して、一緒に学校に戻って助かった例もあった。困難な状況でも自分で主体的に考え、判断し、行動する一連のプロセスが身に付いていた。また地域と学校の距離感が近かった。顔が見える存在となっており、学校が守りきれない命を地域が守った。

緊急避難行動のあと、その後の命をつなぐ場面で気仙沼市が行ってきた教育の成果が発揮された。地域と学校の意思疎通がしやすく、避難所運営が円滑に行えた。

特に中学生たちのアクションが際立っていた。市内全校の中学生が生徒会を中心に自ら考えて、地域の復旧、避難所の運営を自発的に始めた。ある中学校の女子は炊き出しを手伝い、男子はがれき撤去を手伝った。避難者2千人が押し寄せた学校では、水が出ない中で、生徒がトイレの流し水をプールから運んだり、汚れたトイレを掃除したりした。避難者に自分のジャージを貸してあげた生徒もいた。コンサートを自分たちで企画して避難所を回ったり、励ましののぼりをつくったり、ボランティアの受付をしたり。これらは全て、子どもたちが自分で考えて行動したことである。子どもが共助の主役だった。

――この他に、防災教育のポイントは。

防災教育では、自分で自分の命を守る自助、共助を含め、対応力を高めておく必要がある。「自助、共助、公助」の重要性がよく強調される。しかし、あのような大きな震災では、公助の手が届きにくい。そこで、自助、共助、公助それぞれの取り組みをネットワーク化したものとして、〝N助〟という考え方が必要。NPO、NGOをはじめ、多様なセクターにネットワークとして助けてもらった。ESDで日頃からそのようなネットワークを構築していたために、支援の受け方などで大きな効果があったのである。

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