被災地で外遊びが減少 体力低下し肥満傾向児増加

(株)ボーネルンドはさきごろ、子どもの発達段階における「あそび」の重要性について、第8回セミナーを開催。テーマは「東日本大震災から5年・被災地の『あそび』今と未来」。子どもが豊かな心と健やかな体を育むための要件や、福島の子どもの実情などが発表された。福島の子どもたちが震災後、外で自由に遊べなくなった結果、体力・運動能力が低下し、肥満傾向児が増加したなどの見解を述べた。

遊びの重要性を熱弁する中村教授
遊びの重要性を熱弁する中村教授

小児科医の菊池信太郎NPO法人郡山ペップ子育てネットワーク理事長と、中村和彦山梨大学教授が、子どもの遊びや体力について語った。

郡山市内の小学校5年生における体力・運動能力偏差値(平成27年度郡山市震災後子どものケアプロジェクト体力運動能力テスト事業・中村和彦山梨大学教授提供)によれば、改善が進んだ分野と進んでいない分野がある。平成24年度以降、反復横とびや長座体前屈、握力の結果は徐々に伸びている。特に、反復横とびの改善は目立ち、男女ともに全国平均を上回るほど。

その一方、50メートル走、立ち幅とび、ボール投げなどの改善は進まなかった。

震災後、放射線被ばくを避けて、子どもたちは外での遊びを控えた。体育館が使えない学校もあり、廊下や教室などの狭い場所で遊んでいた結果、体力・運動能力が低下したとの見解を、同理事長は示した。

そんな中で、反復横とびの成績が伸びたのには訳がある。震災後、ラダーというはしご状のロープが学校に配布された。子どもたちは、それをジャンプして通り抜けたり、反復横とびのような動きをしたりして遊んでいた。1年、2年と継続するうちに、反復横とびの能力が伸びたと、同理事長は推測している。

25年度の都道府県別肥満傾向児の出現率(小学校5年生)をみると、福島県は約17%。全国で最も肥満傾向児の出現率が高いとされた。27年度の調査では、少し改善しているものの、大きくは変わっていない。同理事長は、「福島県の肥満傾向児出現率も肥満の程度も、個人的な印象としては、改善に向かっているとは思えない」と口にした。「小児期に肥満になると、それを成人になるまで引き継ぐ傾向がある。たとえ成人期に肥満が治っても、冠動脈疾患のリスクは高いまま」などと、その問題点を解説した。

子どもの肥満は、本人だけではなく、周りにも原因がある。家族や周囲に啓発する必要性を訴えた。

25年度、4万人を対象に、学校や幼稚園が終わった後に外で遊んでいるかを調査した結果では、中学生は7割以上が「ほとんど遊んでいない」と分かった。降園時間が早い幼稚園児でも、ほとんど遊んでいない割合が4割を超える。

中村教授は、「日本の子どもは世界でいちばん遊んでいない。遊びを失って抱えた問題、その典型が福島に現れているかもしれない」と警鐘を鳴らした。
子どもが抱える問題として、(1)思考力・判断力・表現力、学びに向かう力(学び続ける力)の低下(2)人を思いやる力、人を慈しむ力の低下(3)基本的な動きが習得されず、運動量(身体活動量)が減少――を挙げた。

(3)に関しては、「体力・運動能力調査のデータの問題ではない。自分で自分の体をコントロールできなくなっているのが問題。けがの増加や抵抗力の低下につながる」と力説した。

「身体運動の発達、認知的な発達、情緒・社会性の発達。この3つの能力は、子どものうちはバラバラでは育てられない」と主張。「この3つの能力を満遍なく育てるのが遊び」と、その重要性を熱弁した。

関連記事