第9回ESD大賞の実践紹介 ユネスコスクール最優秀賞 千葉県立桜が丘特別支援学校

第9回ESD大賞の実践紹介写真人とのつながり重視のESD
1.学校の概要

千葉県立桜が丘特別支援学校は千葉市にある、肢体不自由児が通う特別支援学校である。小学部・中学部・高等部の3学部があり、約170人の児童生徒が在籍している。それぞれの学部に▽A課程(準ずる教育を行う課程)▽B課程(下学年適応および各教科等を合わせた指導を主とした教育を行う課程)▽C課程(自立活動を主とした教育を行う課程)――の3つの教育課程があり、児童生徒の実態の幅が大きい。また、寄宿舎も併設されており、生活の自立を目指して中学部・高等部、約30人の生徒が利用している。

2.ESDのキーワード

次の3つをキーワードとしている。
(1)つながり
(2)発信する・伝える
(3)共生社会の構築

3.ESD活動の概要

児童生徒は、障害を持ち、自分から関わる力や発信する力が弱いという一面がある児童生徒が多い。ユネスコスクールに加盟し、さまざまな学校と交流したり、地域や社会と積極的につながりを持とうとしたりすることが、児童生徒にとって「外とつながる力」「発信する力」「人と関わる力」を育む大事な学習であると捉えている。

これらの取り組みを外に発信していくことで、障害を持った児童生徒や特別支援学校を知ってもらう機会となり、障害者や特別支援学校への理解が深まり、それが、障害の有無に関係なく、お互いに助け合い認め合いながら過ごすことのできる「共生社会の構築」につながると考える。

ESD活動は「つたえること、つながること、ひろがること」というキーフレーズの下、「学校内でのつながり」「地域とのつながり」「他校とのつながり」「社会や学校外とのつながり」の大きく4つに分けて活動を整理してまとめている。

4.実践の具体例

Ⅰ.ESDの主な取り組み

(1)学校内でのつながり(人や物とのつながり)

「つながり」の第一歩は友人や教師、家族など自分の身近な人との関わりやつながりを大切にすること、そして、自分の生活している環境、身の回りの物との関わりを大切にすることである。友人と関わる場面や、人前で発表する活動を多く設定している。さまざまな人との関わりを通して、人とのつながりの大切さ、友達と協力することの大切さを実感できている。

(2)地域とのつながり

運動会や文化祭だけでなく、学校のさまざまな行事を地域の方に知ってもらい、周辺地域とのつながりを大切にしている。公共の交通機関を利用して通学している生徒たちの安全や安心を一緒に考えてくれ、押しボタンの位置や信号の長さを変えたり、車いす通行の看板を設置したりなど、児童生徒を温かい目で見守ってくれている。

(3)他校とのつながり

小学部・中学部・高等部それぞれが、近隣にある桜木小学校、加曽利中学校、市原八幡高等学校、若松高等学校との交流学習を定期的に行っており、同年代の児童生徒とスポーツや音楽を楽しんだり、ディベートをしたりして、お互いによい刺激を受け合っている。

フィリピンや米国との交流学習を行ったり、国内の特別支援学校と交流したりと、国内外の学校と積極的につながりを持っている。同年代の児童生徒とつながることで、刺激を受け合うだけでなく、児童生徒の興味・関心の幅や視野が広がり、多様な人とのつながりの中で豊かな心が育まれている。

(4)社会・学校外とのつながり

学校外や社会、海外とのつながりを持つことで、多くの人と関わるだけでなく、さらに広い視野で物事を捉えたり考えたりすることができると考えており、学校外での児童生徒の活躍の機会を多く持てるようにしている。

さまざまなスポーツ大会に参加したり、海外との関わりを持ったりして学校外とのつながりを大切にすることで、社会や世界に目を向け、「持続可能な社会の構築」「共生社会の構築」を考えるきっかけにもなっている。

Ⅱ.2017年度からの新たな取り組み

(1)サステイナブルスクールとしての取り組み

「つながり」「発信する」ということを大切に「共生社会の構築」を目指す取り組みは継続しており、「つながり」を学校内でのつながり(人や物とのつながり)、地域とのつながり、他校とのつながり、社会・学校外とのつながり――の4つに分類してまとめ、発信している。「サステイナブルスクール」としてサステイナブルスクール同士のつながりを大切にした交流学習にも取り組み始めている。

他県のユネスコスクールとの交流学習を通して、相手のことだけでなく、自分たちの良い点を知ることができたり、相手校に自分たちのことをどのように伝えればよいかを考えたり、より多くの方に自分たちの取り組みや思いを伝えたいという気持ちや意識が芽生えている。

(2)機関包括型アプローチプロジェクト

17年度から、機関包括型アプローチプロジェクト(ホールスクールアプローチ)にも参加。防災教育にも力を入れ、学校全体で取り組んでいる。

小学部、中学部、高等部それぞれの発達段階に応じ、内容を工夫して学習したり、「防災」について全校で共通の体験をしたりすることで、少しずつ防災教育等への意識が高まってきている。

.成果と課題

〈主な成果〉
▽ESDを「つながり」というキーワードで考えるようにしたことで、ESDに対する校内の意識が高まった。

▽障害の有無に関係なく助け合って生きていける共生社会を構築していくことが大切である点が明確になり、「つながり」を大切にした活動を教育課程や授業、生徒会活動等に取り入れることができるようになってきた。

▽高3生が卒業を控えて「この3年間で人とのつながりの大切さを感じた」と述べたように、「つながり」というキーワードを前面に出したことで、児童生徒たちにも分かりやすくESDを伝えられつつあると思う。

▽ユネスコスクールとして、多くの学校や企業との交流に取り組んだことで、積極的に自分のことを相手に伝えようという児童生徒の姿勢が育まれてきた。また、教員には、自校での取り組みや児童生徒の活動を校外に発信しようという意識が高まった。

▽2017年度から、小学部・中学部・高等部それぞれに複数人の教員をESDの係に配置し、校内でESDが広がり深まるよう、校内分掌体制を工夫した。それによって、より多くの人がESDに関わるようになり、各学部でESDの取り組みについて考え、実行に移しやすくなった。

〈課題〉
▽児童生徒が企画し、取り組みたいと考えるESDの活動をより充実させていきたい。

▽特別支援学校ならではの多様性や、障害の程度等を考慮したESDの在り方や実践について探究し、考えていく必要がある。「重度重複障害の児童生徒にとってのESDとは」「価値観の変容とは」どのようなことなのか、学校全体で考え、取り組んでいきたい。

▽ESDに取り組んだことでの児童生徒の変容を、しっかりと発信しなければならない。障害の程度に応じた児童生徒の変容についても考え発信していく必要がある。特別支援学校や児童生徒に関わる周りの人々が、どのような影響を受けるのかについても考察していく必要がある。