第9回ESD大賞の実践紹介 グローバルキャリア人の育成目指す 「地球の安全保障」をテーマとして

高等学校賞 神戸大学附属中等教育学校
フランスの生徒と共同制作した壁画
フランスの生徒と共同制作した壁画

1.実践の狙い

神戸大学附属中等教育学校は、「グローバルキャリア人」育成を教育目標に掲げ、地球的諸課題を踏まえながら国際的に活躍・貢献できる生徒の育成を目指している。ESDは教育目標を達成する上で重要な柱であり、次期学習指導要領でもその実践が強調されていることから、中高一貫教育の全教育課程(教科、総合学習、特別活動、課外活動等)に位置付け、教育改革の原動力として取り組んでいる。

2015年度からスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けており、SGH事業との連関を図りながら、ESDを推進している。

2.主な実践内容

(1)教科横断的特設授業の設置

ESD推進のため中高一貫教育の充実期に当たる3・4年生で社会科・公民科の時間を利用し、教科横断的な授業「ESD」「国際理解」を特設している。

▽3年「ESD」は、社会科教員が中心となって家庭科・理科・情報科・英語科教員が連携して「環境」「水」「食」「資源・エネルギー」「情報化社会」等をテーマに、生徒の調査・討論・発表活動を重視した学習活動を展開している。

▽4年「国際理解」は、「移民」「気候変動」「平和」等をテーマに、公民科教員が他教科の教員の協力を得て、模擬国連方式の学習を取り入れ、地球的課題を探究している。

・同時に、次期学習指導要領の方向性を踏まえ、上記特設科目と連動させながら、各教科でESD実践を進めている。

(2)課題研究論文の執筆

「地球の安全保障」を全体テーマとして、5、6年生では多数の生徒がESDに関連した領域の下で個人研究に取り組み、1万8千字以上の論文にまとめ発表している。

〈主な研究論文テーマ〉

「学校におけるこれからの防災教育の在り方―双方的な防災教育は生徒の防災意識を高めることができるのか」「神戸市の小中学生における減災教育のあり方とは―減災アクションカードゲーム神戸版の開発から考える」

「コンビニエンスストアの食材の危険性―添加物から危険性を解析する」「子どもの貧困から考える子どもにとっての食事と教育のありかた」「局地風が都市の気温に及ぼす影響=六甲おろしを事例として」

「生物から学ぶバイオミメティクス―バイオミメティクスの活用」「難民・移民問題の現状と展望=受け入れる国と受け入れない国」「待機児童問題の解決に向けて認定こども園をめぐる課題と神戸市の待機児童解消策の提案」

(3)ESD国内外体験交流活動

「グローバル&ローカル」な視点を取り入れ、次のESD国内外体験交流活動などを展開している。

▽アートマイル国際交流壁画共同制作プロジェクト=海外の学校とICTを活用して共通のテーマで協働学習を行い、学習の成果として1枚の壁画(1.5メートル×3.6メートルの大型絵画)を共同制作する国際協働学習の事業である。これまで、タンザニア、台湾、メキシコ、フランス、インドネシアの学校と交流してきた。スカイプ会議で相手と直接交流する体験は、生徒たちの英語によるコミュニケーションや異文化理解に対する意欲の向上に大きく貢献している。

▽震災(Disaster)・復興(Reconstruction)・減災(Reduction)・レジリエンス(Resilience)をテーマとした宮城交流プログラム=被災地体験を共有する神戸市と宮城県の高校生・大学生が交流しながら、大規模震災に対するリスクマネジメントについて多角的な視点から学ぶ。具体的には、(1)身近な地域に起こった、あるいは今後起こるであろう自然災害について共に学ぶ(2)震災遺構見学や語り部講話などを通して震災の記憶をどのように後世に伝えていくかを共に考える(3)津波堆積物ボーリング調査などを通して、自然科学的研究手法から震災を捉え、理解する(4)前記活動を通して、他を思いやることのできる生徒を共に目指している。

▽ジオパーク交流事業=山陰海岸ジオパークをフィールドとした鳥取環境大学・鳥取県立岩美高等学校との交流プログラム「多様な地形・地質・風土と人々の暮らし―神戸と山陰海岸の違いに着目して」を展開した。山陰海岸ジオパークの貴重な自然・風土を生かし、(1)フィールドワークを中心とした自然科学的・人文科学的研究手法の基礎を修得する(2)公立鳥取環境大学・岩美高等学校と連携し、現地の大学生・高校生と交流・合同フィールドワークを実施することで自然・風土を学ぶ(3)太平洋側の神戸と日本海側の山陰海岸における気候・風土・歴史の違いを学ぶ(4)山陰海岸ジオパークの貴重な自然・風土について学ぶことを通して、地元「神戸」に対する郷土愛や誇りを醸成する――などに取り組んでいる。

3.ESDの成果・課題・展望

(1)主体的に深く学ぶ力について

「地球の安全保障」をテーマとする課題研究や教科等の主題学習を幅広く展開することで育成を図っている。全員が論文を執筆する課題研究は、テーマの社会的意味や研究手法、情報収集や資料批判、論文執筆時の引用ルールや制約と苦闘するなど、全研究過程で自らの思考力・判断力を総動員しなければならない仕組みになっている。本校では、1回生より4年間、全員が論文を提出しており、意識調査結果からも多面的思考力の上昇が確認されている。課題は、論文の質をどう高めていくかである。そのためには、教科等の学習(特にESD関連内容)との関係性および指導体制の確立が求められている。教材レベルでの連関性を重視したカリキュラム編成等を行う予定である。

(2)他者を尊重し、自分の役割を理解する力の育成について

「アートマイル」の取り組みなど体験交流活動の分野で顕著な成果が上がっている。「アートマイル」は、巨大壁画を学習の成果物として、文化的背景の異なる海外の生徒と協働学習を行い、互いの文化理解を深め、共に国際的課題解決を探究する取り組みである。生徒は「平和」や「資源」等のテーマに対する互いの捉え方の違いを学びながら相互理解を深めている。単なる文化交流を越えた協働作業ゆえに実現したといえる。課題は、現在実施中の国内外の体験交流活動の改善に加え、他の教育分野においてどう深化させるかにある。

(3)自分の夢や希望をもち、それに近づくために行動する力について

顕著な成果が上がっているのが、「震災・復興・減災宮城交流プログラム」である。被災地体験を共有する神戸市と宮城県の高校生・大学生が交流しながら、大規模震災に対するリスクマネジメントについて多角的な視点から学んでいる。震災体験の聞き取り、津波堆積物ボーリング調査や復興庁訪問等を実施している。参加生徒は「復興・減災」を通して災害に強い街づくりの一翼を担いたいとの高い志の下、地元の小学校で「減災カードゲーム」を紹介するなどの社会貢献活動を行った。課題は、同事業に限らず、こうした貢献活動をどう広げるかにある。

(4)自分の成長や健康を考え、行動する力の育成について

ESDとの関連で特に成果が上がっているのが、「ESD・Foodプロジェクト」である。同事業は、国内(広島、群馬)・海外(インドネシア)の学校と、「食」に焦点を当てた持続可能なライフスタイルをテーマに、インターネットを用いた協働学習を行い、その成果を発表するものである。参加生徒の中からは、「子ども食堂」や「フードバンク」について課題研究に取り組むとともに、自発的にフード・ドライブ活動を行うなど、行動の変容がみられた。課題は、「健康と食」を教育課程全体の中にどう位置付けるかという点にあり、現在神戸大学と連携した「ヘルスプロモーション部会」を立ち上げ、カリキュラム開発を行っている。