健康教育を核にESD推進 日々過ごすことに前向きな気持ちを

第8回ESD大賞の実践紹介 ネスレ日本ヘルシーキッズ賞・東京都目黒区立田道小学校

環境教育と国際理解教育を

この賞は、「食育や栄養教育と運動の実践を通じて持続可能な社会を担う子供たちの健康を育てる優れた実践研究」に贈られるもの。

運動会では全校で田道小体幹体操を行った

東京都目黒区立田道小学校は、「食・栄養・健康」を核にした健康教育に全校挙げて組織的・計画的・継続的に取り組んでいる。自ら健康づくりに励む子の育成を目指す活動として、養護教諭と担任の連携による食の指導、ペースランニングや田道小体幹体操などによる健康づくり、パラリンピック出場選手との交流学習などを行っている。

同校の周囲は住宅街であるが、近くには都内有数の桜の名所である目黒川があり、地域の歴史や環境問題を考える題材にもなっている。区域内には複数の大使館、隣接地域には防衛省の留学生会館があり、そこから通う外国籍児童の転出入も多い。出身国も多国にわたる。外国からの友達と日常的に交流のある環境である。校内には日本語教室があり、個別もしくはグループで日本語の学習が進められている。

このような環境を生かし、環境教育と国際理解教育に継続的に取り組み、本校の特色ある教育活動としている。2015年度からは、目黒区教育委員会教育開発指定校として外国語活動の研究を行い、目黒区立小学校の外国語教育のパイロット校としての役割も担っている。

ESDの考え方を取り入れて

これまで、特色ある教育活動としてきた環境教育と国際理解教育は、それぞれ独立した教育活動であったが、ESDの考え方を取り入れて、健康教育を核とした構造に編み直した。

児童一人一人「いのちある自分」が持続可能な社会の担い手になると捉え、命ある自分を支える。生命を維持し、持続させる「食・栄養・健康」を基盤として、自己を心身共に最良の状態を持続できる力があってこそ、他者と共に生き、自分が生きる未来に向けて考え、行動する実践力を発揮できるものと考えている。

「食・栄養・健康」を核にした健康教育に全校を挙げて計画的、継続的に取り組み、自ら健康づくりに励む子供の育成を目指している。

具体的な実践内容

(1)健康教育計画に位置付けた教材の活用

子供たちの身体的、精神的、社会的な健康の育成を目的とした健康教育プログラムであるネスレヘルシーキッズプログラムの教材を活用した学習を学校全体の健康教育全体計画に位置付けた。養護教諭と学級担任が中心となり、学級活動や給食指導の時間等に実施している。

▽教材を活用した保健指導・食育

未来の担い手を育成するという方針の下で重視しているのは、命ある自分を大切にするとともに、人とのつながりを大事にするということである。自分の健康づくりはもちろんのこと、周りの人の体や心を気遣い、共に健康であろうとする児童の育成を図っている。

教材は、低学年から用意されており、継続して活用することにより、児童は自分の体がどのようにつくられているのか、どうすれば元気を保つことができるのかを考え、健康な体は自分でつくることの意味を理解することができた。

学級集団の中で、友人との関わりを通して学ぶことにより、元気な体は一人一人違うことにも気付くことができ、友達との違いを尊重し、思いやりの心を持つことにもつながってきた。友人の体を傷つけてはいけない、ということを児童が意識するようになり、学校全体が落ち着いた生活を送ることができている。

(2)運動による健康づくり

継続的に取り組んできた持久力を高めるペースランニングやなわとびなどの運動に加え、昨年度から、体幹を鍛える運動に学校全体で取り組んでいる。その核が「田道小体幹体操」である。

▽田道小体幹体操

児童の実態に応じて専門家の助言を得て作成された体幹体操は、ディズニーシーの「レジェンド・オブ・ミシカ」の曲に合わせた3分間程度の内容。1年生から6年生まで全員で一斉に取り組める分かりやすい動きになっている。体育の授業開始時の他に、運動会や自然宿泊体験教室、親子レクリエーション活動で活用されている。

(3)夢や希望に向かって

養護教諭の保健指導

未来の担い手の育成のために、「体と心の元気があるからこそ、未来の地球にとってよいことを、力を合わせてみんなで考え、行動していけるであろう」という仮説を立てて、健康教育からアプローチするESDに取り組んでいる。体の健康、体力向上だけでなく、児童が日々過ごすことに前向きな気持ちやくじけない気持ちを持てるように、心健やかに過ごせるようにすることにも力を入れている。その一環として行っているのが、パラリンピアンとの出会いと交流である。

児童が体験的・直接的に学ぶ機会として、「現場・現物・現実」の3現を重視している。パラリンピアンとの出会いは、健康づくりが夢や希望を実現する基盤であり、原動力であることを児童が感じ、考える貴重な機会となっている。

成果と課題

これまで、健康教育、環境教育、国際理解教育はそれぞれ独立した教育活動であった。いずれの教育も長く実践が継続されてきた。しかし、教員も入れ替わり、いつしかルーチンワークのような位置付けとなってしまっていることが課題であった。

この三つの教育活動を、健康教育を基盤として、ESDの視点で見直し、価値付けをすることにより、構想図化し、これからの児童に必要な資質・能力を育成するための教育活動へとリニューアルすることができた。

ESDが教員、保護者に浸透しているかといえば、まだ途上である。日常の教育活動を見直し、ESDという新たな価値付けを行い、再生しているのである。

健康は、学校の校門を出て家庭や地域でも、年代を問わず一緒に考えていけるテーマである。今後は、校内だけでなく、家庭や地域にも、本校の取り組みを知ってもらい、児童とも交流のある活動に参加していただくような実践を進めていきたいとしている。