本が大災害後の心のケアに 学校図書館と災害支援で講演会

2015年10月19日号掲載

「学校図書館の国際潮流と災害支援」をテーマとした講演会が10月10日、東京都渋谷区の文化学園大学ホールで開催された。IASL(国際学校図書館協会)のディリジット・シン会長が講演したほか、震災後の学校図書館支援などが報告された。図書館が居場所となり、本が心のケアになったと語られた。講演会は、来年8月開催予定の「2016IASL東京大会」のキックオフ・イベントのひとつ。同年を「学校図書館年」として制定し、これを広める会の発足も記念して行われた。

講演会を主催したのは、同東京大会運営委員会と学校図書館年を広める会。(公社)全国学校図書館協議会が共催し、外務、文科の両省、国立国会図書館、日本図書館協会が後援した。

まず、村山隆雄聖徳大学教授が「ネパール地震による図書館被災の現状」について報告。4月25日に発生した地震で、死者およそ8900人の32%が子どもたちだった。国内の全学校の半数、約1万6千校以上に被害があった。同国はヒマラヤ造山帯に属しており、80~100年周期で大地震に見舞われてきた。だが、「地震に関する記録がたいへん少ない」。大地震が発生するこの国で「記憶ではなく記録に残す活動が重要」と村山教授は訴えた。また震災後には、地域の文庫や図書館が子どもたちが安心できる居場所となり、決して多くはない本が、子どもたちに落ち着きと癒やしをもたらしていたと話した。

シン会長は、社会の変化に応じて学校図書館がさまざまに変容している姿を示した。最も大きな変化はテクノロジーで、図書館は実際の建物からバーチャル・ライブラリーへと変貌してきている。その技術を活用して、多様な学び方ができるようになった。利便性の一方で、地震や津波、洪水、建物の崩壊、火災などの大災害がいつでも、どこでも起こる可能性があり、甚大な被害をもたらしている。そんな中で図書館は、危機の前後でどんな情報提供や支援ができるのか、十分に備えておかなければならないと呼びかけた。

阪神・淡路大震災からの教訓を語ったのは、20年前の震災時、兵庫県西宮市の小学校に勤務し、同県学校図書館協議会事務局に関わっていた曲里由喜子さん。当時の様子を話した。学校図書館の被害状況から、今後は、(1)危機管理意識を高め、防災体制を整備(2)書架を固定し5段以上は配架しない(3)直立式書架は全て倒れたので傾斜型書架にする(4)心のケアにふれる蔵書を充実させる――などが大切だとした。だが、20年が経ち、再び直立式書架に切り替わってきた。予算の問題はあろうが、大震災の教訓を風化させてはいけないと訴えた。また避難所となっている学校では、青空読み聞かせが、誰が広めるともなく、広がっていった。子どもも大人も聞き入った。震災後の心のケア、心の復興にとって本は、大きな力だったと振り返った。

東日本大震災については、全国学校図書館協議会が実施した支援活動について、同協議会の設楽敬一事務局長が報告。阪神・淡路大震災後には、本を集めて被災地に送ったが、東日本大震災では、方法を変えた。学校支援と地域の活性化につながるように、地元書店が学校から、学習に必要な本の注文を受け、義援金からその購入費を書店に支払う方式とした。学校では、図書の登録などを支援した。義援金は当初、1億円を想定していたが、約2億3千万円の浄財が集まった。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)

 



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