子どもの貧困 対策次第で経済損失2.9兆円差

子どもの貧困対策の有無による影響を報告した
子どもの貧困対策の有無による影響を報告した

(公財)日本財団は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱との共同で「子どもの貧困の放置による経済的影響」の推計調査を今年7月から11月にかけて実施。東京都港区の同財団ビルで結果報告を行った。生産年齢の人口推計で、現状のままと改善対策を講じた場合では、経済損失で2.9兆円の差が生じるとの結論だった。

共同調査では、このたびの推計には加味しなかった要素もほかにあり、経済損失の差は、さらに広がるとみている。

調査は、子ども時代の経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという推定で、深刻化する子どもの貧困を経済的視点から見つめ、有効施策の立案や幅広い議論に生かす基礎データになるのを期待して実施した。

2013年、総務省の人口推計データに基づき、生活保護世帯やひとり親家庭、児童養護施設で暮らす15歳の子ども約18万人が64歳までの所得と税、社会保障費の純負担額を「貧困対策を行わず教育・所得格差が継続した場合(現状)」と「貧困対策が行われ、教育・所得格差が改善された場合(改善)」の2つのシナリオで算出。両シナリオの差分を「社会的損失」とし、推移や結果を比較、分析した。

推計の結果、生活保護世帯やひとり親家庭、児童養護施設で暮らす15歳の子ども約18万人が64歳までに得る所得の合計は、現状シナリオで約22.6兆円。対して、改善シナリオでは約25.5兆円で、約2.9兆円の差額が生まれるとした。これは貧困対策を行わない場合、将来的に約2.9兆円の市場の縮小、経済損失が生まれると指摘する。

さらに、所得の差は、税と社会保障費用の個人負担額の差となって現れるとし、社会保険料と税の合計負担から社会保障給付を差し引いた「税、社会保障の純負担額」は、現状シナリオで約5.7兆円、改善シナリオで約6.8兆円で、約1.1兆円の差額が生じるとする。これは、貧困対策が行われない場合、将来的に政府の財政負担が約1.1兆円増加するという意味をもつものと強調する。

両シナリオ推計のステップは、①貧困世帯の子どもの進学先や就業先の将来推計から就業形態別人口を推計②生涯所得と同所得に紐付いた税、社会保障純負担額を算出③両シナリオの①②ステップを算出し、所得や税、社会保障純負担額の差分を社会的損失として推計――した。

また現状シナリオに対し、主に「未就学児への教育支援対策など」を行うと、例えば、生活保護世帯の子どもの高校進学率が90.8%から99.6%に向上するなどと想定。高校進学率や中退率、大学進学率の変化とその連動による就業構造の変化も考慮した推計を進めた。

同調査は、現状入手可能な統計データから推計を行い、子どもの貧困を放置した場合の経済的影響を具体的な数値で示したものと振り返る。今回は15歳の子どもだけが対象だが、全年齢層や今後生まれる子どもを考慮すると、経済への影響は甚大になるという。統計上の制約から、犯罪による被害額やそこから波及する刑務所の運営費などの矯正コストも含まれておらず、実際の影響額は同調査結果を大きく上回るのが予想されるなどとも警鐘を鳴らしている。

調査データや結果を生かし、子どもの貧困対策を、慈善事業の視点だけでなく、経済対策として捉える重要性や、教育と所得格差の解消に有効な投資対効果の高い施策の模索に活用してもらえたらと投げかける。

調査の詳細を記載した「推計レポート」の全文は、12月中旬に、日本財団サイト(http://www.nippon-foundation.or.jp/)で公開予定。

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