友の死でいじめ見直す 学生が迫真の劇

共感的な理解が深まったいじめ劇だった
共感的な理解が深まったいじめ劇だった

横浜市立中和田中学校(金子邦彦校長、生徒数805人)は12月25日、2年生全員と保護者を対象にしたいじめを考える演劇授業を、総合的な学習で実施した。連携している文教大学の学生が上演。いじめを受ける生徒の苦痛や悲しみを赤裸々に表現しながら、保護者や級友など多くの関係者が寄り添う気持ち、いじめを増長する消極的加担や傍観などの様子も丁寧に演じた。鑑賞した生徒らが、いじめへの考えや行動を見つめ直すきっかけになるのを期待していた。

いじめ劇は「チェンジ・ザ・ワールド」という元高校教諭の石原哲也さんの作品。同校体育館に2年生294人と保護者が集まる中で、文教大学情報学部メディア表現学科の学生たちが演じた。

悪い仲間と関係して同級生をいじめ、金銭を巻き上げている高校生の北沢正平が主人公。

ある日、北沢は、担任教師の依頼で同級生の柳健一を病院に見舞った。2人は不思議に意気投合し、北沢は繰り返し見舞いに訪れた。親睦が深まったある日、柳は、転校の原因となったいじめの事実を明かし、加害者に対する激しい怒りをぶつけた。柳の思いと死を受け、北沢は自分のいじめへの関わりに悩みを深める。ついに、いじめの主導者に対して勇気を振り絞り、決然といじめを否定する意思表示を示す。

舞台は真に迫る演技と音や影を効果的に使った演出などで、いじめ被害者の加害者に対する強烈な憎しみと自分自身への絶望感、いじめ現場での殴ったり蹴ったりの暴行などを生々しく再現。いじめの残酷さや辛さを、観ている生徒たちに深く印象づけた。

一方、柳を優しく見守り勇気づける母親の姿や看護師の存在、好意を寄せる女生徒との交流なども表現。いじめ被害者の苦しみに加え、いじめに消極的、間接的に関わる者の思いや葛藤、さまざまな気遣いや愛情を寄せつづける周囲の人の存在など、いじめを取り巻く関係や構図を丁寧に描き出し、考えさせる構成となっていた。

同校は、横浜市が定めた12月の「いじめ防止啓発月間」を踏まえ、同演劇授業を2学期を締めくくる取り組みのひとつに位置付けた。冬休みを前にした意識啓発などに生かしたいとしている。

同月間と関連付けたその他の実践では、道徳の時間にいじめについて動画教材を視聴して考える授業や、全生徒にいじめの状況や学校生活の様子を尋ねるアンケートを実施。担任教師と生徒がマンツーマンで相談し、交流する機会も設け、いじめなどの悩みを丁寧に話し、受け止められる機会を密にしている。ここでは、生徒が話しやすい担任以外の教員との相談も可能にした。

金子校長は「同校で活動が盛んな演劇部の影響と関係から、大学と連携した同授業が実現した。今後も連携した取り組みが継続できれば」などの喜びと期待を示す。

同授業の意義については、「演劇表現によって、いじめを取り巻くさまざまな関係性がよく見えたのが良かった。被害者、加害者、関係者それぞれの思いを見つめ、理解しながら、いじめ撲滅に役立てば」と願いを語る。

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