数研出版も閲覧させていた 検定中の数学教科書

検定期間中の教科書を校長らに閲覧させていた出版社が、また発覚した。チャート式などで知られる数研出版が、部外者への閲覧が禁止されている検定中の教科書を中学校長らに見せたり、意見を聞いたりしているのが分かった。文科省は、検定終了後の採択期間中に教科書に関して講習会や研修会等を主催してはならないとしている。これについて業界団体である(一社)教科書協会は、全教科書発行会社が参加する公正な説明機会を持つほうが、事前の不正な閲覧などを防ぐとして、文科省の縛りを解くよう同省に求める方向で検討を始める。

数研出版は平成28年度から使用される中学校数学の教科書を、検定中の26年度に、各地域の中学校長や教員を集め、ホテルで閲覧させていた。同社によると、人数などの詳細は調査中としながら、謝礼として3千~5千円分の図書カードなどを渡していた事実は認めた。このほか、中元や歳暮も贈っていた。

28年度、中学校数学での同社のシェアは5.5%だった。

検定中の教科書をめぐっては、三省堂が昨年、校長や教員ら合わせて53人に閲覧させ、謝礼を払っていたのが明らかになったばかりだった。

こうした問題を受けて(一社)教科書協会は、文科省が平成19年1月30日に発出した「教科書の採択に関する宣伝行為等について」と題する通知を見直し、そこに盛り込まれていた縛りを解禁するよう、同省に求める方向で検討を始める。

この通知では、①採択関係者に影響力のある者を採択に関する宣伝活動に従事させない②採択関係者の自宅訪問は行わない③採択期間中には、教科書に関する講習会または研修会等を主催しない――などとされている。

そこで同協会は、全教科書会社が参加できる学校関係者向けの説明会を開催することで、検定中の閲覧や水面下で金品授受が行われるのを防げるとして、検討を始める。通知の見直しは、小学校道徳の教科書が採択される29年度までには実施したい考えでいる。

数研出版は1月4日、文科省に役員2人を派遣し、これまでの経緯を報告。「信頼を損なう行為で、大変申し訳ない」と謝罪した。

同省は三省堂以外に同様の行為がなかったか、義務教育課程の教科書を発行している21社に調査を求めており、20日まで取りまとめるように指示している。これに合わせて、具体的な内容を報告するよう数研出版に要望した。

同協会の松尾謙一郎事務局長は「大切なのは、加盟社40社の教科書が公平に採択される仕組みであり、それがぜひとも必要だ」と訴える。

◇  ◇  ◇

一部の一般報道では、一連の不正問題を受け、19年通知を「文科省が見直す」と、同省が主体となって動く形で報じられている。

これは誤り。まず、業界団体である(一社)教科書協会が見直しを文科省に求め、その求めがあれば、公正性を担保した上で、文科省として見直す構えはあるというのが、現段階での正しい認識である。

関連記事