主権者教育のキモ 林大介東洋大助教に聞く

n2016011201主権者教育今夏の参院選挙から選挙権年齢が「18歳以上」となり、18~19歳の約240万人が新たに有権者に加わる。主権者教育の充実を図るために高校生向け副教材が作られたほか、政治活動も一定の要件の下で解禁となる。今後、どのように主権者教育を進めたらいいのか、副教材の作成にも携わった模擬選挙推進ネットワーク事務局長の林大介東洋大学助教に聞いた。

◆さまざまな授業にからめる

文科、総務の両省が主権者教育の副教材「私たちが拓く日本の未来」を作成し、私も携わった。昨年12月中旬には全国の高校生の手に届いていると思う。

この副教材を「べからず」集にはしたくなかった。原則という理念はあるが、模擬選挙や模擬請願などは、あくまでもプログラムだ。それだけで主権者は育たない。さまざまな授業とからめながら主権者教育を実践するのが重要だ。

例えば国語では、人に分かりやすく伝える文章を指導したり、英語の時間には、オバマ大統領の演説を英語で聞いたりと、多くの教科で主権者教育に取り組める。学習が社会につながっている点が理解できる。

主権者教育は、新しい何かを始めるのではく、今まで学校でやっている授業などに「主権者を育てる」という意識をプラスするだけで変わってくる。今後は、義務教育が終わった段階で、選挙権が行使できる能力が身に付いてないといけない。それが義務教育の目指すべき姿だ。

◆学校・教委・選管が連携

また指導するなかで、政治的中立性は最も重要だ。下村博文前文科相が以前、「学校で指導するときには、バランスよく教えるべきだ」と言っていた。今後はそういう意味では、リベラルだけでなく、保守主義についても教えないといけない。そして生徒たちに未来の有権者として、主権者の1人として考えさせるべきだ。さらに、グローバル化の流れのなかで、日本人は主張ができないと批判されている。主権者教育の充実を図り、それによって自分の言葉で考え、主張できるようにしていく点が重要だ。

だが、「18歳以上」への選挙権年齢の引き下げは、教師が指導におよび腰になる危険性をはらんでいる。

これまでは、教師が各党のマニフェストを集め、それらを生徒たちに見せるなどして授業を行ってきた。しかし、選挙権をもつ高校3年生の前でこれをやったら、公職選挙法違反となる。政策を発表することも、未成年者の選挙活動と見なされる恐れがある。教育現場が萎縮する可能性もある。学校と教委、選管が連携し、主権者教育の在り方を考えないといけない。

また文科省が昭和44年通知で禁止していた高校生の政治活動が、一定の条件で解禁された。思想はともかく、大学生で構成されている「SEALDs(シールズ)」や高校の「t-nsSOWL(ティーンズソウル)」のように、行動を起こすのは大事であり、民主主義を体験するためにデモや集会は意味を持つ。

◆民主主義とはを考えさせる

諸外国をみれば、若者がデモや集会をよく開いている。さらに、生徒会が活発で、コミュニティ・スクールには、学校や地域代表だけでなく、生徒代表も入り、学校運営に携わっている。

一昨年、視察に行ったスウェーデンでは、就学前から民主主義とは何かを考えさせている。民主主義は、失敗も含めて手間がかかる。誰かが決めたことに従うのは楽だ。だが、その結果の責任を引き受けることで、民主主義をつくっていると指導している。同国では、2014年の総選挙で投票率が8割と高い水準に達した。それは、子どものころから主権者教育を行っているからこその割合である。

日本も将来は、幼少期からの主権者教育の充実を図り、高い投票率になってほしい。それには教師の力は欠かせない。

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